年を取ると疲れやすくなるのはなぜ?
さまざまな臓器に起こる「炎症」が原因

 本来、私たちの体には抗酸化力と細胞修復のためのエネルギーといった2つの防御機能が備わっています。これらが十分にあれば、過剰な活性酸素は取り除かれ、損傷した細胞は元通りに回復し、炎症もおさまるのです。しかし、ストレスや生活習慣の乱れで慢性化した疲労により、抗酸化力と修復エネルギーが不足した状態が続くと、酸化も炎症も収束せず、細胞がダメージを受け続け、疲労も続くことになります。

 年を取ると疲れやすくなるのは、多くの人が実感していることだと思います。

 一見、それぞれ異なる現象に見える「疲労」と「老化」は、実は細胞の「慢性炎症」を共通要因として密接に関わっています。

 これまで、老化の原因は明確にはわかっていませんでした。しかし近年、炎症が主要な要因の一つであることが明らかになってきました。さまざまな臓器や組織に起きている、長期にわたる慢性炎症です。脳と体のオーバーワークによって過剰に発生する活性酸素、そして炎症は、疲労を生じさせるだけでなく、老化まで引き起こしていたのです。

 炎症は細胞に損傷をもたらしますが、損傷を受けた細胞が修復されないままになると、分裂を停止した「老化細胞」になります。そして老化細胞周辺からは炎症を起こすサイトカインなどが分泌され、さらに周囲の細胞群にも炎症を拡げて損傷を与えていきます。

 老化細胞は本来、不要な細胞として免疫によって排除されますが、一部は体内に残って蓄積していきます。蓄積した老化細胞が増えると、炎症を起こすサイトカインが慢性的に分泌され、その量も増加します。これにより炎症がますます拡がったり、くすぶり続ける慢性炎症を引き起こします。慢性炎症は、老化関連疾患に潜む共通項なのです。