疲労の原因「活性酸素」は
ただのワルモノではない

 活動能力の低下や疲れを感じやすい「疲労」状態になる原因の一つは、細胞の酸化(錆つき)です。錆つきが増えることで細胞に障害が起こり、「炎症」が発生します。

 私たちの体や脳が活動するために必要なエネルギーは、酸素を使って細胞内でつくられます。しかし、その過程で「活性酸素」という副産物が発生する仕組みになっています。

 活性酸素とは、呼吸によって体内に取り込まれた酸素が化学反応を起こすことで発生する、反応性の高い酸素の総称です。

 脳と体のオーバーワークで活性酸素が過剰になると細胞が酸化され、損傷します。細胞損傷を感知した免疫細胞は「サイトカイン」という物質を放出して炎症を引き起こし、脳に異常を知らせます。炎症が起こると、細胞ダメージはさらに進んで正常に機能しなくなり、活動能力は低下します。この負のスパイラル現象が疲労のメカニズムです。炎症が長く続いて細胞がダメージを受け続けると慢性的に疲れている状態(慢性疲労)となってしまいます。

 しかし、疲労の原因となる「活性酸素」も「炎症」も、ただのワルモノという訳ではありません。実は体が正常に働くために必要な役割を担っているのです。

 活性酸素には、体内の免疫機能や感染防御に関わる重要な仕事があります。また、炎症は自己防御システムの一つで、体の損傷部位の修復や有害な侵入者排除のために起こる反応です。細胞の損傷を感知すると、脳に異常を知らせることで炎症という反応が起こりますが、修復も始まります。

 例えば、運動をした後の筋肉痛も一種の炎症です。筋肉を使い過ぎて細胞が損傷されると、サイトカインが脳に異常のある場所と程度を知らせます。その結果、炎症が起こると同時に筋肉の修復が始まるのです。

 では、本来正常な体の機能を維持するための反応である炎症が、逆に体の活動能力を低下させたり、疲れやすくするというのはどういうことなのでしょうか。その原因は、活性酸素の過剰発生と、炎症の長期化にあります。