年老いた高橋が、ライトを浴びて出てきて、万感胸に迫る表情で、とつとつと語る。「1億5千万円をリベート、じゃなかった協力金として別会社が受領したのですよ。この世はゲンナマという真心によって動くのです……(涙)」
あの番組がなくなってしまったので、男は何を目指せばいいかわからなくなりました。
涙の謝罪はすぐボロが出る
理想的な「謝罪会見」とは?
名番組の後釜として、「プロジェクト・ゴメン」をやってほしかった。
週に一度はテレビで会社幹部が謝罪している。消費期限切れの食品を売ったメーカーの社長、警察官の不祥事を詫びる県警本部長、政治家に裏金を渡したゼネコン社長、イジメで自殺した子が出た学校の校長、公害訴訟で負けた省庁の親分、みなさん謝っている。
謝り方に組織の格が出る。一番よくないのは「自分は当事者ではないが、立場上頭を下げるのだ」という気持ちで、それが見えると逆効果になる。
謝罪会見はテレビカメラにむかって謝っている。カメラのむこうに世間がいることがわかっていても、油断して詫び方が雑になると、すきができる。責任者が頭を下げるのにあわせて、並んだ幹部が一斉に頭を下げる。
そのとき、頭の下げ方が揃っていないといけない。ひとり遅れると、見ているほうが「ダラケておるな」と腹を立てる。
3人にひとりは皺だらけのヨボヨボ老人がいると効果的である。
謝罪の言葉、表情、風格、哀切感、頭を下げる角度(45度)、言葉づかい、眼鏡、ネクタイの色なども重要だ。
涙の謝罪は、そのときはうけても、すぐボロが出る。謝罪会見で視聴者を感動させてはいけない。ケムに巻くのはもっといけない。
人様の前で謝罪するのは、社会的名声が高い人でないと世間はスッキリしない。ただ「ごめんなさい」と謝るのは芸がないから、広報部や弁護士が念には念を入れて工夫した文面を作る。
社長が謝罪し、副社長、専務取締役(女性)、常務取締役2人の計5人が理想的パターンである。
NHKが各月の名謝罪会見を選出して、各月の謝罪大賞を決める。ぶっちゃけた話、謝罪ショーである。教育ママが、子に「テレビで謝罪会見するような立派な人になりなさい」と激励する。「うちのおじい様はテレビで3回も謝ったんですよ」。