発達障害の主な2タイプ「ASDとADHD」
ニトリ創業者の似鳥昭雄氏など著名人も

 発達特性のある人の中には、大学時代までは優秀な成績を収めながら、何十社にものぼる採用試験を受けても採用されなかったり、就職後に困難に直面したりというケースも少なくない。

「学生時代になまじ勉強ができると、なかなか本人も特性に気付かないし、周りにも気付いてもらえない。親元から離れて自立して生活を始めると、マルチタスクができない、時間管理ができないといった困難に初めて気付く」(木村氏)

 就職後、時を経て気付くこともある。専門職では実務能力を高く評価されていたが、管理職になって調整や交渉の仕事が増えると途端にパフォーマンスが低下して、初めて発覚するという例もある。

 発達障害にはさまざまなタイプがあるが、代表的な診断名として大きく2つある。一つは自閉スペクトラム症(ASD)で、強いこだわり、コミュニケーションの苦手さ、感覚過敏などの特性がある一方、高い集中力や論理的思考力という強みを持つことが多く、高度先端IT領域(ソフトウェアテスト、サイバーセキュリティなど)への適性が高い。

 もう一つは注意欠如多動症(ADHD)で、集中の困難さや忘れ物の多さ、行動のコントロールの難しさがある半面、突発的なアイデア出しやクリエイティブな仕事が得意、新しい領域への挑戦や変化への対応力があるといった強みが多く見られる。ニトリ創業者の似鳥昭雄氏など、ADHDの特性を公表する著名人も多い。ただ、芸能人や経営者など唯一無二の存在感を示す人も多く、「われわれとは違うスーパーマンだから」と線引きされてしまいがちだ。

「脳・神経の発達特性により、得意不得意が人によって異なるだけなのだが、ASDやADHDの人たちは、不得意なことばかり注目され、得意なことがあっても見逃されていることも多い。海外では、緻密な作業や高い集中力を生かして、ソフトウェアテストなどで活躍している人も大勢いる」(木村氏)。社会全体が発達障害について前提となる知識を持っていないために、適切な環境であれば、もっと活躍できる可能性がある人がみすみす見落とされてしまっている可能性があるのだ。