スズキの鈴木俊宏社長スズキ提供

スズキが2025年度からの中期経営計画を発表した。最終年度である31年3月期に売上高8兆円、営業利益8000億円を目指す。日系自動車大手各社が中国や米国への対応に追われる中、ドル箱であるインド市場を軸とした戦略で新中計の目標を達成できるか。電気自動車(EV)の販売計画やトヨタ自動車との提携戦略を解明しながら、中計達成の勝算に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

インドを最重要市場と位置づけ
営業利益目標は現在の1.7倍と野心的

「インドはスズキが最も力を入れる最重要市場だ。事業領域を拡大してモビリティにまだまだ手が届かない10億人にもアプローチしていく」。2月に開催された記者会見で、スズキの鈴木俊宏社長は改めてインド市場を強化していく姿勢を鮮明にした。今回掲げた売上高8兆円は、2024年3月期と比べて約1.5倍の規模だ。営業利益の8000億円は約1.7倍になる。

 営業利益の内訳は、四輪事業で7000億円、二輪事業で500億円、残りをマリン事業や新事業で稼ぐ計画だ。

 四輪事業は、31年3月期に420万台売る計画を掲げた。鈴木社長が重視するインド市場では、人気が高まっているスポーツタイプ多目的車(SUV)から低所得者層でも手が届きやすいエントリー車まで幅広く展開することで現在の179万台から254万台に販売を伸ばす。

 インドではシェアを拡大するだけでなく、SUVの「ジムニーノマド」や「フロンクス」のようなインド生産車をグローバル展開するべく、地理的に近いアフリカや中東など成長市場へ輸出していくという。

 日本市場では、ハイブリッド車(HV)の販売比率を高めて、市場が縮小傾向にあっても70万台(現在は67万台)規模の販売を維持していく考えだ。

 今回の数字を23年1月に発表した成長戦略と比較すると、売上高の目標を従来予想の7兆円から8兆円に上方修正しているが、逆に、世界販売台数の目標は500万台から420万台に下方修正したことになる。

 目標台数を引き下げたことに関して、鈴木社長は「市場の状況を見て臨機応変に対応していかなればならないので見直した」と説明。売上高の上方修正は物価上昇を加味しているものの、「原材料費が高騰する中でもしっかりと収益体質を改善させ、必要な投資をやり遂げたい」と強調した。

 23年の成長戦略の中では、電気自動車(EV)の販売計画も示していたが、今回の発表ではどう変化したのか。次ページでは、スズキのEV戦略について解明するとともに、故鈴木修氏が19年に結んだトヨタ自動車との提携の行方にも迫る。