EV時代を見据えて各社が仲間づくりに奔走する中、独自路線を突き進むのがスズキだ。相互のOEM(相手先ブランドによる生産)供給は行なっているが、それ以外の分野ではっきりとしたシナジーは見えていない。鈴木俊宏社長は今後トヨタ自動車との提携をどう進めていくのか。特集『スズキの野望』の#3では、両社の提携の行方や、両社がシナジーを発揮するための意外な秘策とその副作用に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
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10年ぶりとなる技術説明会を開いたスズキ
トヨタの影は見えず、あくまで独自開発を強調
「私たちはお互いの強みや課題を学びあうことが技術進化のスピードを飛躍的に高めてくれると実感している」――。
トヨタ自動車の佐藤恒治社長は、5月に開催した技術説明会で、SUBARUやマツダと共同で説明会を開催した意義についてこう強調した。
この説明会には佐藤社長のほか、SUBARUの大崎篤社長とマツダの毛籠勝弘社長も出席した。
トヨタは高効率で小型のエンジンを開発すると表明し、SUBARUはトヨタから提供を受けたハイブリッド機構を搭載した新型ハイブリッド車(HV)を公開。マツダもプラグインハイブリッド車に力を入れる姿勢を示した。
3社合同で説明会を開くことで、電気自動車(EV)時代でもトヨタ連合で内燃機関を含めた全方位戦略(マルチパスウェイ)を対外的にアピールする考えだが、その場に、2019年に業務提携を結んでいるはずのスズキの姿はなかった。
スズキは7月に10年ぶりとなる技術説明会を“単独”で実施した。
クルマの軽量化を軸に、EVに搭載する電動駆動モジュール「eアクスル」の自社開発や機能を絞ったソフトウエアを開発することも報道陣に説明した。
ただ、いずれの技術にもトヨタの影は見えず、あくまで独自開発する姿勢を強調した。
業界ではEV時代を見据えて、トヨタグループとホンダ、日産自動車、三菱自動車グループの2陣営に集約されつつある。そんな中、スズキはトヨタとの提携を今後どう活用して生き残ろうとしているのか。次ページでは、トヨタと提携を結んだ背景と提携戦略の行方や、両社がシナジーを発揮するための意外な秘策とその副作用に迫る。