「不親切な参考書」にイライラする生徒が知らない事実【東大生が教える】『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第34回は「参考書の選び方」について考える。

大前提は「必要量・必要難易度」

 リスニング対策に重点をおく龍山高校東大専科に対して、同じく東京大学を志望する難関大コースの小杉麻里は「独力で対策しなければいけない」と思い立つ。本屋に行き参考書を探すのだが、「自分一人じゃ勉強の仕方がわからない」と不安になる。

 受験勉強をするにあたって、参考書はほとんどの生徒がもつ必須アイテムだ。とはいえ、やたらとたくさん買えばいいというものでもない。

 参考書は「必要量・必要難易度」が大前提となる。特に、しっくりこないからといって、すぐ別の参考書を解き始める「浮気」は厳禁。そのような場合は得意分野だけ解いて満足しているだけかもしれない。

 また、大学受験の試験問題は、基本的に教科書の内容から作成されている。教科書の内容を理解できていないならば、ハイレベルな参考書に取り組むべきではない。

 私が個人的に気にしていた、参考書選びのポイントとして「学習環境」「解答・解説」「網羅性」の3点がある。どれも意外と見落とされがちだ。

 まずは「その参考書の内容を質問できる環境か?」。特に上のレベルの参考書であればあるほど、自分自身で考えさせるためにわざと説明が省略されることがある。そのような時に、周りに質問できる先生や友達がいるかどうかは重要だろう。

 同じ参考書を使っている友達や、指導経験がある先生がいれば安心だ。先生がおすすめの参考書を示してくれることは、「その参考書を指導できる環境がある」ことを意味する。

解説の「行間」は自力で埋める

漫画ドラゴン桜2 5巻P49『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 次に、「解答・解説の量は適切か?」という点である。私の母校で使用していた数学の独自問題集では、そのまま答案に記述すれば間違いなく×をもらうレベルの簡素な解説しか載っていなかった。

 というのも、丁寧すぎる解説は、かえって勉強にならないと考えられていたからだ。充実しすぎている解説では、どこが重要な部分かわからなくなったり、「これだけたくさん読んだのだから理解しているに違いない」との思い込みをもたらしたりする。

 解説文で説明されていない「行間を埋める」ことが、勉強においては重要なのだ。もちろん、この考え方は「行間を埋める」サポート環境があることを前提としている。先述した学習環境も併せて考えた上で、自分が一番成長できる分量の解答・解説をもつ参考書を選ぶことが望ましい。

 最後に「受験後も使用できるか?」ということに着目したい。特に社会や理科、古典の資料集には、受験勉強に限らず広範な知識が網羅的にまとめられている。

 大学に入ってからの勉強では、教授独自の考え方や最新の研究成果などが紹介され、全体像を見失うこともある。このような意味で高校までの資料集は、大学からの勉強の出発点や羅針盤となることだろう。

 私は時々、日々目にするニュースをメタ的に理解するために、塾で使用していた参考書を紐解いたり、そこで紹介されていた論文や書籍をたどったりすることがある。

 当然、高校と大学では学習する内容のレベルや内容の違いもあるため、全ての参考書を大学で利用できるわけではない。しかし、大学受験の出題者は往々にして「受験勉強」という枠を越えた角度からの出題を試みる。受験勉強の知識体系が、必ずしも志望する教科・学問の研究体系と一致しないことを踏まえると、知的好奇心を刺激する「余分な情報」が含まれた参考書を選ぶのも悪くはないだろう。

漫画ドラゴン桜2 5巻P50『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 5巻P51『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク