頭の悪い人は「ずっと自分探し」をし続ける。では、頭のいい人は何と考えるのか。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「自分」とは、周りの環境との共同作品
自分探しは、多くの人がハマる現代病です。
「本当の自分とは?」と自分探しを続ける人が周りにいないでしょうか。
実際には、自分というのは、
「自分自身と周りの環境がともに作り上げる共同作品だ」
と考えるほうが自然なのです。
自分とは、自分自身を単体で深く追求した先にあるものではありません。
それよりも、自分と環境の「接着面」こそが、自分の本質と考えるべきでしょう。
たとえば、シャボン玉をイメージするとわかりやすいでしょう。
泡の中身を覗いても空っぽです。
そして、外界との境界である「泡の表面」こそがシャボン玉の実体です。
「物事には固有の正体がある」という考え方は、実は現代の自然科学が作り上げたある種の「宗教」です。
科学が社会に大きな力を持ちはじめた時期、デカルトなどの哲学者によって「還元主義」の考えが普及し、それが社会全体に浸透しました。
還元主義というのは、「物事を細かく分解していけば、その真実がわかる」という考え方です。
もっともらしい感じがするものの、人間の精神や社会にそのまま当てはめるのは難しい場合も多くあるのです。
「自分探し」のワナ
人間というのは本来、「精神」と「物質」を完全に分離して捉えることは難しい存在です。
「自分」というものが、どこからどこまでを指し、世界との接点をどう考えるべきかは、科学が普及するずっと以前から議論されてきたテーマでもあります。
たとえば、紀元前の古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、精神と物質を分けずに捉えていました。
つまり、「物事を分解していけば、固有の正体が見つかるはず」という思考の枠組みも、過去の哲学者や科学者たちが生み出した「発明品」にすぎないのです。
本当の自分を追い求めるよりも、「自分は周りの環境とともに変化し続ける存在なのだ」と考えるようにしましょう。
そのような柔軟性のある視点を持つことが求められます。
周りの環境との接触面を自分自身として捉え直し、周囲とのつながりを大切にすることで、「自分探しのワナ」にハマらずに済みます。
正しさのワナにハマらない
物事がうまくいくときには、「努力」「運」「環境」「才能」といった複数の要素が絡み合っているものです。
そのことを理解し、たった1つの要因に依存しない柔軟な思考が必要です。
成果を得られたときに、「努力だけが大事だった」「才能だけが要因だった」と、1つの要素に限定してしまうと、他の重要な要因を見落としてしまいます。
もしその後、思うようにいかなかったとき、挫折や限界を感じてしまうことになるでしょう。
たとえば、同じ努力をしていても、タイミングに恵まれた運によって大きなチャンスを掴む人もいれば、才能が花開くことで新しい道を切り開く人もいるのです。
1つの要因に依存するのではなく、成果には複数の要素が関係していると理解しましょう。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。