コメ価格が1.8倍!なのに消費者物価はたった3%上昇…政府統計データが“お粗末”なワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

なぜ体感物価と消費者物価指数は乖離するのか

 食料品や日用品が値上がりしている。例えば、「物価の優等生」といわれ価格が安定していた卵。卸売価格の目安となる「JA全農たまご」の東京地区の平均価格(M基準、1kg当たり)は、1月に258円だったのが2月は315円に上がった。前月比で22%もの上昇だ。

 2025年に企業が予定する食品値上げ品目数は、2月末時点で昨年の86%に達したとみられる。背景には、世界的な異常気象の影響で食料供給が不安定化したことが挙げられる。また、中東情勢やウクライナ戦争など、地政学リスクによってエネルギー資源の供給体制も不安定化している。

 この4年ほど外国為替市場では、円はドルなど主要通貨に対して下落基調(円安)で推移し、輸入物価は上昇した。国内の物流問題や人手不足による人件費の上昇も、物価上昇の要因になっている。

 わが国の名目ベースの賃金は緩やかに上昇しているものの、食品や日用品・エネルギー価格の上昇ペースがそれを上回っている。企業は人手不足もあり、人材確保のために賃上げを重視している。ただし、それは主に若年層に手厚く、シニア層への恩恵は限られたものだ。多くの家計が実質ベースでの賃金上昇を安定的に実感するには、時間がかかるだろう。

 日本銀行の『生活意識に関するアンケート調査』には、「1年後の物価は現在と比べ何%程度変化したと思うか」との質問項目がある。24年12月の調査結果(平均値)は17.0 %と、9月調査の14.5 %上昇を上回った。

 これは、総務省の消費者物価指数の上昇ペースより高い。1月の消費者物価指数は前年同月比4.0%上昇。生鮮食品を除く総合指数は同3.2%の上昇だった。

 日銀は物価安定の目標を、消費者物価の前年比上昇率2%と定めている。日常的に私たちが実感する物価(体感物価)は、消費者物価指数に基づく公式な物価統計と乖離している。