築年が古くても
家賃がどんどん上がる謎
東京の家賃は大幅に上昇している。三井不動産グループの住宅系J-REITである日本アコモデーションファンド投資法人の投資家向け資料では、2023年8月期までの半年の賃料変動率はファミリータイプ10.0%、ファミリーよりも広いラージタイプで10.4%、コンパクトタイプで4.3%、コロナで最も需要が減退してマイナスだったシングルタイプも0.3%のプラスになった。
賃料変動率とは、同じ部屋が再募集されて前回の成約賃料よりどれだけ上がったかを表している。平均入居期間が4年ほどなので、築年が4年古くなったにもかかわらず、家賃が10%上がった住戸が多いことになる。通常、築年が古くなれば賃料は安くなると思われるかもしれないが、家賃は需給バランスで決まる。市場の稼働率が高ければ、築年が経過しても家賃は上がることになる。
この投資法人の88.5%は東京都区部に所在する。コロナ禍で経済を止めたり、飲食や旅行などの特定業種が営業自粛を迫られたりする中、非正規雇用であるアルバイト・パート・契約社員などが職を失い、家賃を負担できなくなった単身が増えたり、外国人の入国に制限が加えられたり、賃貸需要が急減したりしたことは事実だ。それを都区部の世帯数で見てみよう。
2015年中の世帯増加数は84207、以降2016年81738、2017年80054、2018年80109、2019年78872と8万世帯前後が5年続いていた。そこでコロナ禍となる。2020年は22381に急減し、2021年は-3926とマイナスになる。
コロナの出口が見え始めた2022年は78792と約8万世帯増に戻し、2023年は9月までの累計で79075に達している。前年となる2022年の10~12月は9000世帯増えているので、同水準の推移が続くと考えれば、2023年は近年最高の88312の世帯数増加となる。
2024年はもっと増える可能性がある。なぜなら、東京都の有効求人倍率が高止まりしているのに対して、地方のそれは下げており、その差が広がっているからである。人は仕事がたくさんあるところに移転するものだ。この状況では地方から東京に人が流入することになる。