「やりたいことがわからない」――そう感じたことはありませんか? 夢を追いたいけれど、何を目指せばいいのかわからない。そんな迷いを抱えるあなたに、とある言葉を紹介します。
「目についたら行ってみる、誘われたら断らない」
20代に伝えたい50のこと』(ダイヤモンド社)の著者秋元祥治さんは、「このシンプルな行動が、未来を大きく変える」と言います。気づかぬうちに狭めていた世界を広げ、自分の本当にやりたいことを見つけるためのヒントとは?
本連載では、『20代に伝えたい50のこと』から抜粋しながらお伝えしていきます。

【やりたいことがわからない…】伸びる20代が必ずやっているたった1つの習慣Photo: Adobe Stock

なぜ「誘われたら断らない」だけで、やりたいことが見つかるのか?

 20代の頃、自身のやりたいことはいったい何だろうかよくわからないと言う人が大半かもしれません。大学の授業で学生に将来の夢を聞いても、「やりたいことに一生懸命取り組んでいきたい」とか「気の合う仲間たちと、面白いことをしたい」という答えがよく目につきます。つまり、やりたいことが何なのか、よくわからない、ということなのでしょう。

 僕自身もそうでした。何か面白いことを将来したいと口にしながらも、具体的には何もなかったのです。そんな中、何かの交流会で出会ったのが最初のきっかけだったでしょうか。佐藤孝治さん(ジョブウェブ取締役会長)に将来について相談に行った時、教えていただいたのがこの言葉でした。

「目についたら行ってみる、誘われたら断らない」

 ということを3ヵ月本当に真に受けて取り組んでみなよ、というのです。

 大学の中にも、会社の中にも色々なセミナーや講演会の告知ポスターが貼ってある。普段だと関心がないから目に入らないもの。だけれど、ある時、目についたら行ってみるのです。友人から誘われた演劇、興味が乗らなくても、ちょっと腰を上げて観に行ってみたらいい。

 僕も含め、人は知っているものの中、狭い中でしか選択をしないものです。知らないものは、知りようも選びようもないからです。つまり、知っているものの中で興味や関心の順位をつけているわけです。

「やりたいことがない…」と悩む20代がやりがちな“間違った選び方”

 僕も、佐藤さんにこの言葉を教えてもらってから、誘われたものに、目についたものに、できるだけ行ってみるようにしました。友人に誘われたヘビメタのライブだって、興味は1ミリも惹かれなかったけれど、一度も聞いたことないなと思い、参加してみました。結果は散々でしたが、ヘビメタは僕の好きなものではないということがわかったし、それ以外のジャンルに好きなものがあるんだってことに気づくことができたのです。

 20代のうちは、出会ったことのないもの、出会ったことのない経験をどんどん重ねることがとても大事だと思います。

 たとえプログラミングに縁がなかったとしても、初心者向けセミナーのポスターが目に入り、参加をしてみたら思いがけず新たな関心を持つことになるかもしれません。ものづくりのシンポジウムに誘われて行ってみたら、これまで知らなかった魅力に心惹かれることもあるでしょう。

「全部少しずつ食べてみる」小6男子の答えがキャリア選びの正解だった

 よく、僕が授業で伝えるたとえ話があります。見知らぬ街でケーキ屋さんに入ったとしましょう。たくさん並んでいるショーケースの中で、一番美味しいものを選ぶとしたら、あなたはどうしますか? と。僕チョコレートが好きだから、とチョコケーキを選ぶという子もいます。店員さんにオススメを聞く、と答えた子もいました。中には、値札を見て一番高いものを選ぶというちゃっかりした子もいました。

 もう10年近く前ですが、北海道の小学校6年生の授業でゲスト講師をさせていただいた時のことです。やはりこの問いを子どもたちに投げかけたところ、一番前に座っていた男の子が手を挙げ、大きな声で答えました。

「全部少しずつ食べてみて、一番美味しいものを選んだらいい」

 実際にケーキ屋さんの店頭で現実的かといえばそうでないかもしれません。けれど、この小学6年生の答えこそ、核心をついているように思えてならないのです。このケーキを職業と読み替えてはどうでしょう。バイトでの飲食店が楽しかったから飲食業で働きたい。選べないから就職課のスタッフに聞いてみる、あるいは給与や福利厚生の一番よいところを探してみる……といってもよいのではないでしょうか。

20代で試さなければ一生後悔する、やりたいことを見つける方法

【やりたいことがわからない…】伸びる20代が必ずやっているたった1つの習慣秋元祥治(あきもと・しょうじ)
(株)やろまい 代表取締役/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 教授
1979年生まれ。大学在学中の2001年、21歳で地域活性化に取り組みたいとG-netを創業。
中小企業支援と若者をつなぐ長期実践型インターンシップ事業を立ち上げ、高校教科書「政治経済」に掲載されるなど高く評価されている。2013年よりOKa-Bizセンター長に就任し、10年間で25000件を超える相談を受け、売上アップをサポート。1ヵ月の相談待ちがでる人気の相談所となっている。経済産業省「キャリ教育アワード」優秀賞、「ものづくり日本大賞」優秀賞などを受賞。内閣府地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザー。

 できることなら、すべての仕事や会社で働いてみて、一番フィットするものを選べたら、間違いなさそうです。もちろんそれは現実的ではないにせよ、やりたいことを見つけるには、知っていることや経験したことをどれだけ増やせるか。そして、それらの中で自身が選ぶモノサシ、つまり基準を持てるかどうかなのです。

 そして、モノサシは様々な体験を相対化することによって定まってくるのです。「ああ、あの仕事はとても楽しかった」とか、「こういう経験はとてもワクワクする」「このジャンルは、面白いけれど自分の取り組みたいテーマじゃないな」といった具合です。

 どんな仕事を自分がしたいのか、どの会社が合っているのかわからない人こそ、10倍会社を回ればよいのです。アパートの物件探しだってそう。そして、恋愛だってそうかもしれません。多くの人やものとふれ、経験し、そしてその相対化の中で、自身の中で判断する軸=モノサシを定めていく。

 その中で、自分がピンとくるものを選んでいけばよいのではないでしょうか。

 30代となり、年齢を重ねていけばいくほど、フットワークは重くなり、また「なぜここに来たの?」といぶかしがられることも多くなるでしょう。だから、20代のうちにこそ、できることなのです。

 やりたいことを見つける方法。

 目についたら行ってみる、誘われたら断らない。