人生に正解がないとしたら、どういう基準で考えていけばいいのか。『20代に伝えたい50のこと』(ダイヤモンド社)の著者秋元祥治さんは、大学の最初の授業で、そのことに関して必ず話していることがあると言います。それは、「高校までと、大学以降はまったくルールが変わる」ということです。本連載では、『20代に伝えたい50のこと』から抜粋しながら、メッセージをお伝えしていきます。

「納得した人生を送れている人」「送れていない人」の決定的な違いとは?Photo: Adobe Stock

高校までと、大学以降はルールが全く変わるんだ

 僕が初めて大学の教員になったのは、2008年のこと。「大学で授業をしたい」といたるところで言っていたら、紹介をうけて28歳の時に四日市大学で非常勤講師を拝命しました。それから15年経ちました。

 当初から、そしてここ最近はより、就職や仕事というものについての得も言われぬ不安感を持っている人々が多いように感じます。メディアを通じて伝えられるニート・フリーターの問題や早期離職者のニュースの影響もあるかもしれません。ただ、根源的には何のために働くのかということ、あるいは人生のあり方の正解はなんだろうという答えを知りたい、ということなのかもしれません。

 いつも授業の初めにお伝えすることがあります。

 高校までと、大学以降はルールが全く変わるんだ。
 大学入試までの受験勉強は、1つの答え【絶対解】がある。
 だけれどもここから先は違うんだよ、と。

生き方やキャリアに【絶対解】はない。納得して選ぶ【納得解】しかないんだ

 一人ひとりの幸せや価値観も違うんだから、生き方やキャリアに【絶対解】はない。

 自分自身で考えて、悩んで、そして自分で決断する。

 そして、納得して選ぶ【納得解】しかないんだ、と。

 地方や田舎でなく、大都会で働き生きることが幸せなのか。
 中小企業ではなく、大企業に勤務することが幸せなのか。
 古く伝統的な現場でなく、新たなベンチャーが魅力的なのか。
 やりがいと手触り感より、給与が高く休暇が多いことが幸せなのか。
 別にどっちがいいとか悪いとかじゃないんです。自分で多様な価値観にふれて、考えて、悩んで、それで決めたらいいなと思います。

納得解を自身で選ぶには大事なポイントがある

 都会で・大企業で・安定して・偉くなることが大事だ、という絶対解があった時代はもう終わったように感じます。大学を出たから就職を約束されたわけじゃないし、上場企業でもいとも簡単に経営破綻することもある。

 大事なことは自分で決めて納得したものなのか。価値観はずいぶん多様化しているようです。最近では、一流大学を卒業後、大手企業や外資コンサルティング会社勤務を辞めて、NPOへ転職したり、地域へ移住して地域おこしに取り組む人も目立つようになりました。

 僕自身のキャリアも、同じように感じる人々もおいでかもしれません。地元の進学校を経て、早稲田大学に入学しました。僕の母は、「早稲田大学をちゃんと卒業して大企業に入れ」と何度も言ってました。僕が大学を中退してNPOで起業をしたあとですら、暫くの間、今からでも遅くないから、銀行や商社に行ってほしい、行ってほしかったとずいぶん言われました。

 きっと、高度成長を経験してきた上の世代の人々にとってはそれが「絶対解」だったのかもしれません。けれど、大きな会社に入ることで幸せが約束されるわけではないでしょう。

 僕にとっては、NPOという選択肢も納得して選んでいるから幸せな毎日です。

 大学時代の後輩は、学生時代から料理をつくることが好きでそこにこだわりを持っていました。結局、早稲田大学法学部を中退して板前修業にでて、そして今では大阪で店を出しています。「早稲田出て大企業行けばいいのにもったいない」という人もいるのかもしれません。でも、本人が納得して選んだ道だから、それでよいのだと思うのです。

 納得解を自身で選ぶには大事なポイントがあります。それは、たくさんの人に会い、多くの経験を重ねること。そしてその中で、自分のモノサシを磨き定めていくこと。自分で物事を決めていくためには、決めるための基準=モノサシがなければいけません。多様な人に出会い、多くのチャレンジを早い段階ですることが、自分の中で大事なこと、そうでないことの基準を固めていくのに大事なこと。価値観は、相対化によってつくられていきますから。

 絶対解より納得解。
 人生に正解はないのだから自分で決めて納得できるか。

 誰かの人生や世間の人生でなくって、自分が自分自身の人生のオーナーだからこそ、自身が納得できる選択をしていくことが大事。色々なことを言う人がいても、自分で決めて、自分で納得できたらそれでよい人生なのだと僕は考えています。

(本原稿は、秋元祥治『20代に伝えたい50のこと』を抜粋、編集したものです)

「納得した人生を送れている人」「送れていない人」の決定的な違いとは?秋元祥治(あきもと・しょうじ)
岡崎ビジネスサポートセンター・OKa-Biz センター長/NPO法人G-net理事(創業者)
1979年生まれ。大学在学中の2001年、21歳で地域活性化に取り組みたいとG-netを創業。
中小企業支援と若者をつなぐ長期実践型インターンシップ事業を立ち上げ、高校教科書「政治経済」に掲載されるなど高く評価されている。一方、中小企業支援をf-Biz・小出宗昭氏に師事。2013年よりOKa-Bizセンター長に就任。4年間で8000件を超える相談を受け、売上アップをサポート。3~4週間の相談待ちがでる人気の相談所となっている。経済産業省「キャリ教育アワード」優秀賞、「ものづくり日本大賞」優秀賞などを受賞。早稲田大学社会連携研究所招聘研究員・内閣府地域活性化伝道師。経済産業省「地域産業を創り出す33人の演出家たち」のうちの一人として、また雑誌「AERA」や書籍『社会起業家になる方法』では、日本の主な若手社会起業家の一人として紹介されている。