
新たなリセッション(景気後退)懸念が10日、市場を揺るがした。ダウ工業株30種平均は900ドル近く下落し、米国株が今年最大の勝者に名を連ねるというウォール街の見方を後退させた。
多くの投資家は「米国例外主義」、すなわち経済力や技術革新といった米国が他国に対して持っているとされる優位性が、今年も力強い株高を後押しすると予想していた。
ただ、貿易戦争への懸念や、経済成長鈍化の兆候、人工知能(AI)相場崩壊の兆しが、そうした楽観論から輝きをいくぶん失わせた。ドナルド・トランプ米大統領は先週末、リセッションの年内発生の可能性を否定せず、米国株の新たな下落の波を引き起こした。S&P500種指数は2.7%下落し、ハイテク株が多いナスダック総合指数は4%下落した。景気動向に敏感だとされる中小企業株と共に銀行株も下げた。一方、債券価格は上昇した。
モトリー・フール・アセット・マネジメントの投資アナリスト、シェルビー・マクファディン氏は「政権が真顔で、目標が痛みをもたらすことを意味したに等しい発言をしたのは、これが初めてだ」と語った。
米国の強さに疑問が生じているが、他の国々は自国経済の再生に向けた取り組みを強化している。中国は経済成長目標を達成するために追加の景気刺激策を打ち出している。ドイツは軍とインフラへの大規模な支出を発表した。
中国、カナダ、メキシコからの輸入品に対するトランプ氏の関税が発動され、即座に報復措置を招いたことを受け、市場は動揺した。株価、債券利回り、原油価格は急落し、投資家は慌てて貿易戦争が米経済に及ぼし得る影響を見極めようとしている。