「子どもが感情的になり、言うことを聞かない」「他の子と比べて、うちの子が遅れていないか心配」「褒美をつい与えてしまう」など、小学校6年間は、良くも悪くも親の影響を受ける最も多感な時期。自分で考えて学ぶ子は、どのような生活環境にあるのか。「指導実績」×「心理学」×「ベネッセのデータ」でわかった最高の教育を「声かけ」というシンプルな方法でお伝えします。誰でも一度は感じたことのある子育ての悩みを、簡単に解決するには「声かけ」を変えることです。『自分で考えて学ぶ子に育つ子育ての正解』より、「ほめ方」「しかり方」よりももっと大事な「声かけ」で、「子育てあるある」に対応したノウハウをお伝えします。

自分の子どもが優れていても他の子と比べない
「子ども同士をむやみに比べることに意味がないことはわかりました。そう言われたので、褒めて叱らずやっていたら、言うことを聞かなくなってしまい、最後はドカンと叱って自己嫌悪に陥ってしまいます」
この流れでうまくいかなくなっていく家庭をたくさん見てきました。この方は何を褒めていたのでしょうか。我が子と周りの友達を比べて、優れているところを褒めていたのでしょうか。そこがもしかしたら言うことを聞かなくなってしまった要因かもしれません。
我が子が他の子どもより優れていると感じたときでも、比べてはいけません。子ども自身の努力と成長を認めることが大切です。
できていない我が子と周りを比べないだけではありません。たとえ、我が子が優れていても比べないのです。比較がよくないとわかっている親でも、ここに陥っている人は多いです。
「あの子よりこんなにできているね。すごいね!」と言われている子は、根拠のない自信が生まれてしまいます。そのためどこかで自分ができていないことに気づいたとき、心が折れてしまうのです。
「徒競争で1位だった」「大会で優勝した」「コンテストで表彰された」「塾のテストで順位が上がった」―こんなシーンでも比較して褒めません。
「徒競争で1位になるために一生懸命頑張っていたよね。
頑張ったことがすごかったと思うよ」
という声かけでじゅうぶんです。
褒め方にもテクニックがある
「クラスで一番はすごいね! お母さん、うれしいな」
という褒め方はしません。
「一生懸命努力しているし、よく頑張っているね。私も何か頑張ろうかな」
と、子どもの努力や成長にスポットを当てます。
また、子どもが調子に乗ってしまった場合でも、冷静に対応します。
「あなたが一生懸命努力している姿を見ると、本当にうれしい。でも、わたしは、一番だったから褒めているわけではないの。目標に向かっていつも頑張っているから、すごいって言っているんだよ」
いつも結果ではなく、頑張った行動について、褒めます。
心理学者B.F.スキナーが提唱した「強化理論」は、行動が報酬によって強化されると、その行動の頻度が増加するという考え方です。
褒美はよくない、与えるにしても、みんなで喜べるものでしたね。ここでお伝えしたいのは、「負の強化」です。
「みんなである子にいじわるしていると、楽しい」
「よく寝坊していると、それが当たり前になって毎日ぎりぎりまで寝ていたい」
「努力していないのにいい結果が出てしまって、努力する習慣がなくなる」
などです。
子どもに負の強化が起きているときは、その行動が望ましくないことを冷静に伝えましょう。小さく習慣化することでよい結果につなげていきます。
そして、伝えるだけでなく、子どもの習慣が改善されるように親が頑張ることです。ここが非常に大事なのに、伝えるだけで変わらないと嘆いている親御さんがとても多いです。
子どもは子ども。あなたとは別の生き物です。子どもを変えようとせず、自分の行動をどう変えられるか、そこだけを考えて生活しましょう。
怒鳴るのではなく、子どものことを思って叱ります。そして、
「本当はあなたはできる子。大丈夫。一緒に頑張ろう」
と、心の底から思って、笑顔で声かけします。
「優れている」と思った時点でアウト
我が子が優れていると、親もうれしくなります。無意識に比べて褒めてしまうかもしれません。それくらい、比べることをコントロールすることは難しいです。
一緒に喜ぶことはもちろんOKです。ただし「優れている」と思う感情自体、比べることから生まれることを忘れないようにしましょう。
我が子が優れていても比べません。比べるのであれば過去の我が子とだけでしたね。うちの子ならどんな学校に行っても、どんな仕事をしてもいい人生を送れると、子どもである今から信じることを習慣化してみましょう。
(本原稿は、『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』より一部抜粋、再編集したものです)