【大人の教養】ローマ帝国と秦の超意外な共通点とは?
「地図を読み解き、歴史を深読みしよう」
人類の歴史は、交易、外交、戦争などの交流を重ねるうちに紡がれてきました。しかし、その移動や交流を、文字だけでイメージするのは困難です。地図を活用すれば、文字や年表だけでは捉えにくい歴史の背景や構造が鮮明に浮かび上がります。
本連載は、政治、経済、貿易、宗教、戦争など、多岐にわたる人類の営みを、地図や図解を用いて解説するものです。地図で世界史を学び直すことで、経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの世界史講師の伊藤敏氏。黒板にフリーハンドで描かれる正確無比な地図に魅了される受験生も多い。近刊『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の著者でもある。

すべての帝国は道を通す――交通網の歴史
前7世紀を皮切りに、ユーラシア大陸の各地で世界帝国の形成が見られます。前30年までに地中海世界の統一に成功したローマが、ローマ帝国として広域支配を展開します。
ローマ帝国にはローマ街道という優秀な道路網があり、これは首都ローマと地方の属州とを直結させるもので、その支配域の全土に網の目のように張り巡らされます。「すべての道はローマに通ず」といいますが、これは決して比喩ではなく、ローマの道路網の実態を指した言葉です。
中国では、前3世紀に戦国時代を制して秦が中国を統一します。秦もまた、皇帝専用の直道(ちょくどう)や民間人用の馳道(ちどう)といった道路網を全国に整備し、地方統治の効率化を図ります。
秦では用途に応じて2種類の道路網を整備したことで、他勢力とは一線を画す存在であると言えます。秦の統一は15年ほどしか続きませんでしたが、次の統一王朝である漢(前漢:前202~8、後漢:25~220)もまた、秦の統治体制を採用し、のべ400年にわたる長期政権となります。
道路のメリットを一番受けたのは?
さて、このようにユーラシア各地で世界帝国が成立すると、あることが生じます。世界帝国は、いずれも広域支配により地域一帯の治安を安定させ、その恩恵を一番受けるのが商人です。
商人は広大な帝国の各地を渡り歩き、帝国が整備した道路網が商業活動をより刺激します。また、帝国の統治者も商人を熱心に保護し、商業活動の活性化を促します。
(本原稿は『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の一部抜粋・編集を行ったものです)