「俺に童貞を捨てさせろ！」天才作家・梶井基次郎、泥酔＆絶叫の夜

正気じゃないけれど……奥深い文豪たちの生き様。42人の文豪が教えてくれる“究極の人間論”。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、意外と少ないかもしれない。「あ、夏目漱石ね」なんて、読んだことがあるふりをしながらも、実は読んだことがないし、ざっくりとしたあらすじさえ語れない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文学が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』（ダイヤモンド社）。【性】【病気】【お金】【酒】【戦争】【死】をテーマに、文豪たちの知られざる“驚きの素顔”がわかる。文豪42人のヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な生き様”を一挙公開！

評価されなくても
病床で書き続けた貧乏作家

琵琶湖の疏水でボート遊び、そして大騒動

梶井基次郎は病を患いながらも、わりと活動的で、ある日の夜、小説家・中谷孝雄と津守萬夫という人物とともに琵琶湖の疏水にボートを浮かべて遊んでいました。

その後、陸に上がって月見をしていたところ、ボートが下流に流されてしまいました。

それを見つけた梶井と津守は、疏水に飛び込んで流されるボートを止めることに成功します。しかし、それと引き換えに体が冷えてしまいました。

体を温めるために飲酒→泥酔→大の字で絶叫

そこで、街に戻って酒を飲んで体を温めることにしたのですが、泥酔した梶井は、京都・祇園町にある八坂神社の前で大の字に寝転び、

「俺に童貞を捨てさせろ！」

と恥じらいもなく、友人たちに大声で叫んだのです。

若き文学青年の焦燥感

当時の粗野でバンカラな学生らしく、強がってはいたものの、「自分の人生は短いんだ」という自覚を持っていたからこそ、「何かをやり遂げたい」という思いが強かったのかもしれません。

梶井の要望を真に受けた友人たちによって、梶井は近くの遊郭に連れていかれました。

しかし、遊女があてがわれたところで、なんとゲロを吐いてしまいました。

ついに望みは叶ったが……

それでも結局、望みどおりに童貞を捨てられたのですが、のちに背徳感が募り、友人たちに愚痴をこぼしていたといいます。

なんとも面倒くさくも、憎めない男です。

※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』（ダイヤモンド社）より一部を抜粋・編集したものです。