JR西日本Photo:PIXTA

顧客との重要な接点である「お客様センター」には日々、多数の問い合わせが寄せられる。例えば、JR西日本の問い合わせ件数は年間約81万件、1日当たり約2200件の電話と約200件のメールが送られてくるという(2023年度)。こうした「顧客の声(以下VoC=Voice of Customer)」は、顧客のニーズを把握する貴重な経営資源であるが、必ずしも活用されていなかったのが現実だった。この経営課題に対し、JR西日本グループは生成AIを活用したVoC分析パッケージを開発。その開発者に話を聞いた。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

JR西日本グループ企業が開発した
VoC分析パッケージ

 VoCを集め、社内にフィードバックする大変さはよく分かる。というのも筆者はかつて、東京メトロで「お客様センター」の管理を始め、さまざまな角度から顧客の声を収集・分析、活用するCS部門「お客様サービス課」で5年ほど働いていたからだ。

 そんな中、昨年12月に開催されたJR西日本の合同展示会「イノベーション&チャレンジデー」で、お客様センターを運営するグループ企業の「JR西日本カスタマーリレーションズ(以下、JWCR)」のブースが目に留まった。それは開催直前に実運用を開始したばかりの「生成AIを活用したVoC分析パッケージ」に関する展示であった。

 昔の仕事を懐かしみながら話を聞くと、お客様センターが抱えている課題は、「労働集約型コンタクトセンターの人材獲得が困難」「オペレーターの経験やスキルに対応品質が左右される」「一部の声しか分析に活用できていない」とのことだった。

 また、VoC分析においても、重要なデータに絞って、多大な人員、工数を投下して集計しているが、そもそものデータも集計担当者が大まかなルールにもとづき集計しているため、品質がばらついていた。

 業界の実情は10年前から変わっていないのだなと思ったが、生成AI技術の活用で、全件データを一定のルールのもと、少ない工数で、質の高い集計データを作成できるようになったのだという。

 鉄道ジャーナリストの前に元業界人として話を聞きたい!と思い取材を申し込んだところ、JWCRの岩崎隆利取締役(正しくは崎は立)、AIを開発したELYZAの松浦大貴グループマネージャーに話を聞くことができた。