
JR西日本は1月21日、国内鉄道事業者としては初めて資金決済に関する法律に定める「第二種資金移動業者」に登録されたことを受け、2025年度第1四半期中に新たな決済サービス「Wesmo!(ウェスモ)」のサービスを開始すると発表した。自社クレジットカード「J-WESTカード」、ICカード「ICOCA」に続く、新たな決済サービスを導入する狙いとは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
JR西日本が資金移動業への
参入を決めたワケ
資金移動業とは銀行以外の一般事業者による為替取引を指す。安価で便利な送金サービスのニーズに対応するため、2010年に制定・施行された資金決済法で創設された比較的新しい業態で、その後のキャッシュレス決済の普及をふまえ、2021年5月に改正資金決済法が施行されている。
改正資金決済法は資金移動業者を、100万円を超える取引が可能な「第一種」、100万円以下の「第二種」、5万円以下の「第三種」に分類している。金融庁ホームページによれば、今年1月末時点の登録事業者は82社。5社が第一種で、残りは第二種、現時点で第三種業者は存在しない。
鉄道事業者の金融サービスといえば、昨年5月にJR東日本の「JRE BANK」、昨年10月に京王電鉄の「京王NEO BANK」が銀行代理業のサービスを開始しているが、JR西日本はなぜ銀行ではなく資金移動業という形態を選択したのか。
デジタル金融サービス進出の狙いは、基本的には各社とも同じだ。鉄道を走らせれば人が乗ってくれた時代は終わり、事業者が人の動きを作り、お金を使ってもらうよう積極的に働きかけなければならなくなった。
JR西日本デジタルソリューション本部WESTER-X事業部の内田修二次長は、資金移動業への参入の理由について、ストックではなくフローを重視したためと説明する。銀行は顧客から預かった資金をストックとして運用するビジネスモデルだ。
JR東日本と京王が参入した銀行代理業は、所属銀行に代わって預金や貸付、為替取引などを行う業態である。JRE BANKの所属銀行は楽天銀行であり、集めた資金は同行が運用するため、JR東日本は関与できない。