
三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第36回は、合格発表後の「受験生の過ごし方」について考える。
進学実績に高校教師が思うこと
東京大学現役合格を目指す天野晃一郎と早瀬菜緒。2人を指導する桜木建二は、東大受験に懐疑的だった2人の母親同士にライバル心を植え付け、受験指導への協力を暗に取り付ける。
現実世界に目を向けると、国公立ではほとんどの大学で前期日程の合格発表が行われ、後期日程の試験も終了した。積年の努力が実った人、その実りを来年に持ち越す決意を固めた人、あるいは後期の合格発表を待つ人など様々いることだろう。
試験後、合格発表までつかの間のモラトリアムを終えた後、新大学1年生は途端に忙しくなる。まずは、学校にとっても一大イベントとなる「合否報告」だ。
母校では、先生間での結果共有のためのホワイトボードが職員室に設置され、国公立大学ごとの合格者名が書き込まれるシステムだった。私も合格後、ホワイトボードに自分の名前を記した瞬間を鮮明に覚えている。その空間はまた、友達と喜びを分かち合う、あるいは来年に向けて再起を誓う場所でもあった。
生徒の合否が学校にもたらすのは、進学実績だけではない。母校の担任がこんなことを言っていた。「もちろん大学合格が全てじゃないよ。ただ、生徒が志望する大学に合格できなかったことは、こちら側の指導に少なからず至らぬ点があったことを意味するんだよね」。
つまり「100人の合格」という1つの結果ではなく、むしろ合否に至る過程にあった「100通り以上の生徒指導」が大切だということだろう。「○○大学に○○人合格」の実績ばかりに踊らされていると、見過ごしがちな視点だ。
サークル選びには気をつけろ!

入学手続きを終えると、すぐに4月になる。入学直後には、真っ先にサークルの新歓活動がある。高校の部活動よりも多種多様で専門性に富んだ団体がたくさんあるが、気をつけることも多い。外部からの干渉を受けないサークルという組織は、えてしてその実態が把握しづらい。
昔から言われているが、サークル活動にはカルト宗教やネズミ講などの勧誘も紛れ込んでくることがある。体験会と言って強引にセミナーに誘ったり、チラシを配るふりをして、しつこく連絡先を尋ねてきたりと具体例は事欠かない。私の知り合いは、世界史の研究会と聞いて参加したら、「教祖」の写真が飾ってあり、慌てて帰ってきたという。
宗教や悪徳商法とまではいかなくとも、特定の企業や政党がバックについているサークルは少なくない。新入生は無料のご飯会にホイホイついて行く前に、その団体の背後関係を調べることが肝要だ。
昨年、新入生だった私もあるサークルに興味を持って新歓に行ったのだが、実は数年前にトラブルを起こした団体が、名前を変えていたことがわかった。後から調べてみると、前身のサークルは私が高校で生徒会活動をしていた時に、「進路相談会をしないか」と声をかけてきていた団体だった。
高校時代の私は、その企画に乗り気だったのだが、当時の生徒会顧問が「背後関係が明確じゃない」と指摘し、実施には至らなかった。しばらくして、そのサークルのコンプライアンス問題が露呈したことを考えると、顧問の慧眼には驚かされるものがある。
とはいえ、ほとんどの団体は健全で、大学生活を彩ること間違いなしだろう。新大学1年生にはサークルに潜む危険性に留意した上で、ぜひ多くの団体に足を運んでみることをお勧めする。

