いつも嫌なことが頭の中をぐるぐる巡ったり、「あの人のことを考えると不安やイライラが止まらない」と感じることはないだろうか。そんなとき、まず大切なのは、問題を解決しようとする前に、一度「ストレスをリセット」することだ。『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)では、ストレスを抱えやすい人のために、科学的に実証された気分転換の方法を多数紹介している。本書は単なる事後対処にとどまらず、そもそもストレスを寄せつけない体質をつくる方法についても解説。ベストセラー『エッセンシャル思考』の著者グレッグ・マキューンも「この本は、人生の本質的でない混乱から抜け出したいと願うすべての人にとって、必読の救いの書である」と絶賛。今回は発売を記念して、特別に本書の内容を一部抜粋、再編集してお届けする。

考えることを「後回し」にする
反芻(はんすう)思考の強迫性を少しでも減らすには「不安になったり、考えすぎたりし始めたらそれに気づき、後回しにする」というテクニックがある。
たとえば、「夜の7時になったら10分間だけ悩む時間をつくる」と決め、あとは前を向いて進むようにする。
このテクニックは何十年にもわたって不安を研究してきたペンシルベニア州立大学の名誉教授で心理学者のトーマス・ボルコヴェック氏が開発したものだ。
ここでの目標は考えすぎを「頭の中で1日中響いている雑音」から、「一時的で自己完結するようなもの」に変えることだ。
この方法により、いつもの悩みが頭に浮かんでも、以前は「耳を傾けなければ」と思っていたのが、「いや、あとで考えればいい」に変わるのを感じられるはずだ。
もう1つ嬉しいのは、昼間や夜に忙しくしているうちに、心配事を思い出すのを忘れてしまうこともあることだ。
忘れなかったとしても、意識することで自分の考えを客観的に見られるようになる。
「他のこと」に夢中になる
他のことに参加するだけで、「今という瞬間」に入り込むこともできる。
夢中になれるようなことならなおさらだ。
ローマ大学のオッタヴィアーニ博士が主導した研究では、2つのグループに対して「それが起きたときに怒りを感じ、そのあとも動揺が続いた出来事を1つ思い出しながら、自分がどう感じたかをよく考えるように」という指示を与えた。
次に一方のグループは10分間ただ静かに座るよう指示され、もう一方のグループはドアが半開きになった隣の部屋で実験担当者たちが話していることを「盗み聞き」して気を紛らわせた。
後者の気を散らせたグループのほうは、90%以上が他人の会話を聞いて反芻をやめたが、静かに座っていただけのグループは100%が反芻していたことを認めた。
つまり気を散らすこと、ましてやそれが魅力的な内容なら即座にフォーカス先を変えられることがわかった。
「気を散らす」だけで、反芻思考が減り、血圧も改善する
よく似た実験をペンシルベニア州立大学の元教授で心理学者のウィリアム・ゲリン博士も主導している。
自立型のスクリーンに、鮮やかな色のカードやポスターを表示して、視覚的に気を散らせただけでも反芻思考が減り、血圧も改善することが示された。
そう、「ちょっとした気晴らし」にこれほど大きな効果があるのを覚えておいてほしい。
誰だっていつも問題から逃げてばかりいたくはないだろう。
短い休憩を取り、健全なマインドになってから大切なことに向き合うのがポイントだ。
※『瞬間ストレスリセット』では、科学的に短時間でストレスを解消できる方法を多数紹介。その場しのぎではなく、ストレスに強くなるための習慣や対策(ストレス耐性を高める方法)も幅広く取り上げています。