いつも嫌なことが頭の中をぐるぐる巡ったり、「あの人のことを考えると不安やイライラが止まらない」と感じることはないだろうか。そんなとき、まず大切なのは、問題を解決しようとする前に、一度「ストレスをリセット」することだ。『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(ジェニファー・L・タイツ著、久山葉子訳)では、ストレスを抱えやすい人のために、科学的に実証された気分転換の方法を多数紹介している。本書は単なる事後対処にとどまらず、そもそもストレスを寄せつけない体質をつくる方法についても解説。ベストセラー『エッセンシャル思考』の著者グレッグ・マキューンも「この本は、人生の本質的でない混乱から抜け出したいと願うすべての人にとって、必読の救いの書である」と絶賛。今回は発売を記念して、特別に本書の内容を一部抜粋、再編集してお届けする。

【書いた瞬間、悩みが消えていく!】認知行動療法の専門家が「嫌な出来事があったら書くこと」をすすめる超納得の理由とは?Photo: Adobe Stock

書くことで、「嫌なこと」から解放される

紙に自分の課題を書き出すと、重荷から解放され、そこから距離を置き、新しい視点も得られる。

ペンと紙を準備して、邪魔されずに静かに集中できる時間と場所を選ぼう。

タイマーを15分に設定し、次のどれかについて書いてみよう。

▼考えていることや心配していること
▼夢見ていること
▼不健康な生活の問題点
▼今まで避けてきたこと

文章や文法が間違っているかどうかなどは気にしすぎずに、自分が選んだトピックに対する考えや感情を、できるだけ深く表現することがポイントだ。

我慢していることがあるなら、そこからどう成長できるか、そこに意味を見いだせるかを考えてもいい。

「過去形で書く」のがポイント

過去に起きたことを書く場合には詳細に思い出し、必ず過去形で書くようにしよう。

毎回同じテーマでなくてもよいが、3~4日続けて自分の心に素直に向き合い、観察する。

書いている間にひどく動揺するならやめてもいいし、トピックを変えてもいい。

感情的になること自体はかまわないので、時間の経過とともに感情がどう変化するかも追ってみよう。

書くことで「悩みの連鎖」を断ち切る

これはジェームズ・ペネベーカー博士が開発した「エクスプレッシブ・ライティング」で、研究でも効果が確認されているジャーナリングのテクニックだ。

頭に浮かんだことをただ書き殴るのではなく、大事な悩みを深く掘り下げることで自分の感情を引き出すことができる。

これは重要なことだ。なぜなら、過去の苦しい出来事を自分の中で処理できていないと、それが他の問題として現れることがあるからだ。

「ハッピーエンドのストーリー」を描く

つらいことを書いてエネルギーを使い果たすのが心配なら、その出来事に意味や希望を見いだすことにフォーカスを移してみよう。

たとえば、ハッピーエンドにつながるステップを想像しながら書いてみる。

結婚生活の不安や不満を書いたなら、それに続けて「5年後の夫婦関係が良くなるように、今日自分ができること」を書くといい―ペネベーカー博士の長年の協力者でペンシルベニア州立大学の生物行動健康学教授ジョシュア・スマイス博士はそうアドバイスしている。

トラウマの治療にも効果的

命にかかわるような目に遭い、それを繰り返し思い出して苦しんでいる場合、PTSDの可能性がある。

PTSDは、日常でどうストレスを感じるかにも影響してしまう。

トラウマの治療は複雑で時間がかかるものだが、エクスプレッシブ・ライティングはわずかなセッション数でも前進する助けになることが、研究によって証明されている。

国立PTSDセンターの副所長デニス・スローン博士の研究によると、トラウマのある人たちに30分×5回のライティング演習で指示や質問(「覚えていることを正確に説明してください」「その出来事によって人生がどう形づくられた?」など)をしたところ、PTSDの症状が大幅に軽減したという。

この改善の度合いは、別の研究に基づいたトラウマ療法セッションを20回受けたのに匹敵するほどだった(ただし、これは専門家が主導する演習なので、自分では試さないように)。

私のクライアントでも、恐ろしい体験をしてそれに苦しんできた人がいたが、ライティングのセッションを5回行うと劇的に心が落ち着いた。

記憶に支配されず、「自分」と「問題」を切り離せる

トラウマになるのは命を脅かすようなレベルの出来事で、記憶はトラウマを完全に再体験しなくていいようにバラバラに保存される。

しかし、その経験を整理する、つまり起・承・結をつけて繰り返し語ることで記憶の保存状態を修正し、新しいエンディングを与えることができる。

また、記憶に支配されるのではなく、そこから自分を切り離せるようにもなる。

日常の中で感情的になったときや人生でひどくつらい出来事に対処するときも、エクスプレッシブ・ライティングをすれば混乱を整理し、処理できるようになるのだ。

※『瞬間ストレスリセット』では、科学的に短時間でストレスを解消できる方法を多数紹介。その場しのぎではなく、ストレスに強くなるための習慣や対策(ストレス耐性を高める方法)も幅広く取り上げています。