
ヨラム・アリエリーさん(82)は長年、投資資金の大半を動かさず、株式市場の上下動に委ねてきた。だが今月11日、我慢の限界に達した。
ドナルド・トランプ米大統領の経済政策、特に関税の影響を恐れて、彼は株式投資のほぼ半分を売り払った。まだ追加で処分するかもしれない。
「毎日のように判断が変わっている」。フロリダ州ロングボートキーに住む元企業経営者のアリエリーさんはそう語る。
多くの一般投資家は、関税の賦課と政府予算の削減というトランプ政権の支離滅裂な組み合わせに動揺しており、株式を買って長期間保有する「バイ・アンド・ホールド」戦略の前提に疑問を持ち始めた。
他に負けない利益をもたらしてきたS&P500種指数は先週に調整局面入りし、ウォール街は米経済がリセッション(景気後退)に向かいつつあると懸念している。
個人投資家による401k(確定拠出年金)の取引は3月前半に通常の4倍超に上った。取引記録を管理しているアライト・ソリューションズが明らかにした。ここ1カ月は、取引が過去5年近くで最も多かった。
米国株を売った投資家は、マネー・マーケット・ファンド(MMF)や短期債、金、国外市場に安定を求めていると述べる。欧州の安全保障支出の増加を前提に、同地域の防衛関連株は人気のある投資先となっている。