例えばアメリカのプロレス団体は、選手のキャラづくり、ストーリー展開などを、株主やファンを含めたステークホルダーにプロレス界の種明かしをした上で、最高のショーを提供している。そして演者であるレスラーだけでなく、その公演を演出したプロデューサーがリスペクトされる。
日本ではあくまで選手のみが注目され、作り手への関心は皆無。日本にもプロレスのプロデューサーが必要だと信じ、三富はそれを目指している。
慶應大や博報堂の同期は今や管理職
「もっと会社員をやっておけばよかった」

連載第1回目で慶應大学出身の三富は、大学で「言語化する力」「論理的思考力」を身に着けたと語った。慶應に合格し、卒業するということは、基礎的なことをしっかりでき、考えて行動できる証明だとも言える。
短い期間ではあったが大手広告代理店の博報堂で営業職も経験した。会社員時代の経験をどう振り返るのか。
「もっと会社員を、社会人をやっておけばよかったと反省することが多い」
大学時代や会社員時代の同期たちは、管理職になり始めている。同世代の経営者も増えてきた。これまでは自分が信じた道を歩んできたが、会社員だった時代にビジネスのプランニングや組織マネジメントなどのノウハウをもっと学んでおけばよかったと後悔している。
団体運営においても、常に葛藤はある。これまでのプロレスの枠にとらわれない団体運営をしてきたし、プロレスファン以外にもプロレスの魅力を届けようと考え続けてきた。他のエンターテインメントと並ぶようなものを目指してきた。これまでに何度もSNSでバズるような話題も提供してきた。
なんせ、リング上の試合も充実している。そんな自分たちの試合は、プロレス専門誌では紹介されない状況にある。プロレスの枠を超える活動は自ら選んだものではあったものの、そこには葛藤がある。
三富は今後も団体を進化、深化させたいと考えている。そのために、まずはレスラーを増やすことを目指している。所属レスラーが増えることによって、関心を持ってもらうポイントはより広がるだろう。
それだけでなく、リアルな公演の接点以外に展開できないか模索している。たとえば、公演の模様をYouTubeで無料生中継するなど、挑戦を日々続けている。日本一のプロレスプロデューサーになるための、三富の模索は続く。