
客単価は通常のプロレスの2倍
「黒字」にこだわった経営
三富は、プロレス団体を運営しつつも、従来のプロレスファンではない層に団体を知ってもらうことを目指している。「会社員などが非日常を味わうためにライブ、ミュージカルなどに行く感覚で寄ってもらいたい」(三富氏)
同団体のファンのうち既に7割はもともとプロレスを観ない層であり、客単価も高くなっている。通常のプロレスでは客単価4000円前後のところ、同団体は8000円程度と倍だ。しかも、高額な席から売れていく。派手な演出や、他団体から有名レスラーを招聘するなどコストを掛けることもあるが、高単価を維持することできっちりと黒字を出すことにこだわっている。
団体のあり方については、常に自問自答を繰り返している。プロレス・格闘技の聖地、後楽園ホールへの進出や、関西での大会実施も実現してきた。一方で、特に後楽園ホールでは“自分たちの世界観”を作ることができたのか疑問にも思ったという。プロレス・格闘技の聖地ではあるが、自分たちの熱狂、感動が届くか、多様性そのものの選手の生き様を伝えられたか。
大会場に進出すればいいというわけではない。いまは、後楽園ホールよりも小規模な新宿FACEなどを中心に、世界観が伝わる大会運営を目指している。特に新宿FACEは選手と観客の距離も近く、動画なども活用しやすい。歌舞伎町のど真ん中という場所も、団体のカラーと合っている。
「日本のプロレス業界は、興行師はいるが、プロデューサーが少ないのが課題」。有名な選手同士を大会場で対戦させたり、軍団抗争をさせた結果、大会場が満員になる……。このように何か一つの話題を作ることで大ヒット興行をつくってきた興行師はいた。
しかし、それは「プロデューサーではない」と三富。感動をいかにシステム化し、他の試合や会場でも再現可能とするか。そして、その場にしか存在しない鳥肌ものの体験をいかに作るか。再現性が高く、その場でしか得られない感動もあり、ビジネスとしてもサステイナブルであるものを目指している。