慶應→博報堂→プロレスラーに転身した男が「もっと会社員をやっておけば…」と後悔するワケプロデュースや経営を手掛けるだけでなく、自身も選手として試合に出る三富兜翔さん 提供:PPPTOKYO

高学歴ショック人間大集合!有名大学を卒業後、世間に、人にショックを与えるような活動をしている人のキャリアは、何がどうなってそうなったのか。「学歴ネタかよ」「どこがショックなのか」「どこまでを高学歴と呼ぶのか?」とツッコミたくなるだろう。生き方の多様性を感じてほしい。第1回はプロレス団体PPPTOKYOの総帥、三富兜翔(35)を取材した。第2回の今回はプロレス団体経営者としての視点で、慶應卒の彼の奮闘と苦悩をお伝えする。(千葉商科大学 国際教養学部准教授 働き方評論家 常見陽平)

大会や興行ではなく「公演」
新進気鋭のプロレス団体を目指して

 新進気鋭のプロレス団体「PPPTOKYO」。この団体は大会や興行のことを「公演」と呼ぶ。「PPPガールズ」と呼ばれるグラビアアイドルやレースクイーンが酒を注ぎつつ、一緒に観戦するハレンチシートなるものまである。入場時には、セクシーな衣装の女性がレスラーをエスコートし、試合前に記念撮影までが行われる。ずっとトランス風の音楽を流しつつ行う試合もある。

 団体の総帥・三富兜翔が「ウチは訳ありレスラーが多い」というように、メジャー、インディー問わず個性豊かな見た目のレスラーが多数登場する。訳ありかどうかの判断はともかく、多様であることは間違いない。メジャー団体の練習生だったが練習が辛くて夜逃げしてきたものもいる。

 今や団体の看板レスラーとなっている「究極生命体」ちゃんよた選手は、筋肉系YouTuberでもあり、ボディビルダーであり、昨年引退するまでセクシータレントとしてAVに出演していた。元高校球児で性別適合手術を受け、女子プロレスラーとして活躍するエチカ・ミヤビもいる。三富は「様々な事情を抱えた人が輝ける場をつくりたいと思っている」と語る。

慶應→博報堂→プロレスラーに転身した男が「もっと会社員をやっておけば…」と後悔するワケ青い衣装のちゃんよた選手(PPPTOKYO所属)と赤い衣装の夏すみれ選手(フリーランス) 提供:PPPTOKYO

 一方で、試合はパワーやスピードを感じる本格的なものだ。技の難易度や選手が流す汗を通して選手の真剣さが伝わってくる。試合後のマイクアピールでは、試合の達成感と悔しさから感情が爆発し、号泣する選手もいる。

 先月6日の新宿公演では、女子プロレス界のレジェンドで今年引退する高橋奈七永選手と、前述したちゃんよた選手が対戦し、ちゃんよた選手が惜しくも負け、号泣した。選手の人生が投影されていて、一見華やかなショーの公演のようで、ここは泥臭い。

 そんなPPPTOKYOだが、従来のプロレスの枠を超えた団体を目指している。三富自身、いちレスラーとしてプロレス界に飛び込み、憧れのレスラーとの対決やタッグなどの夢を実現しつつも、業界の旧態依然とした体質に違和感を抱いていた。たしかに、昭和から平成初期のプロレスはテレビ中継があり、各団体が所有する道場や寮もあり、頻繁に地方を巡業するという運営スタイルが一般的だった。

 ただ、それは今の時代に合っていない。団体も多様化の時代である。道場や寮を持たず、所属選手も減らし、他団体やフリーランスのレスラーを活用し、都心の小規模会場を活用し、ネット配信でプロモーションするなど、変化が起きている。既存のプロレス団体において多少の意識の変化は見られるものの、運営やマインド面での変化は追いついていない。