「今日も朝から、だる重…」脳の“休め”アラームに無頓着な人が必ずやっているNG行動写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事がはかどらない、集中力が続かないという人は「脳が疲れている」かもしれない。脳は体重の約2%の重量しかない一方で、エネルギー消費量は体全体の約20%を占める臓器だ。大量の情報処理によって起こる「脳疲労」とはどんなものか。神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科特命教授の渡辺恭良氏が解説する。(取材・文/フリーライター 柳本 操、ダイヤモンド・ライフ編集部)

寝る前も起きた直後もスマホチェック
睡眠によくないとわかっているが…

「ここ数年、スッキリ目覚めた朝はほとんどありません」

 横浜市在住のBさん(43歳)は、いかにも疲れているといった表情で話す。どこかの栄養ドリンクのテレビCMで流れていた「毎朝、だる重……」というセリフが「まさに今の自分」と笑うが、ことは深刻のようだ。

 Bさんは広告代理店でマーケティングを担当している。仕事柄、毎日最新の「情報」に触れるのはマストだ。時間があればスマホでさまざまなサイトを見て、情報のインプットに余念がない。

「寝床にスマホを持ち込んで、寝る直前までYouTubeやインスタを見ちゃいますね。もちろん仕事に必要なことばかりではありませんが、日課になっていて」

“寝る前スマホ“は睡眠によくない影響を与えるのはわかっているが、やめられないという。朝も起きがけにベッドの中でメールやニュースを見ることもしばしばある。

 会社は東京都内にあるが、週3、4日は在宅勤務で、会議もオンラインで行うことが多い。通勤や人と対面で会うために費やす時間が減った分、時間に余裕ができ、生産性が上がったかといえばそうでもない。

「ついダラダラと仕事をしてしまい、集中力も続かなくて。仕事とプライベートの境目がないからか、1日中仕事をしている感覚に襲われることもあります。タスクはたくさんあるのにやる気が出ず、イライラすることも増えました」

 寝ても疲れが取れないのは年齢のせいもあるのかと諦めつつも、このままではいけないとも思いながら、毎日を過ごしている。

「Bさんのように疲れが翌日まで取れないという相談は、よく受けます。さらに集中できない、やらなければいけないことに意欲がわかない、イライラしやすいといった自覚がある人は、脳疲労が溜まっている可能性があります」

 こう説明するのは、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科特命教授の渡辺恭良氏だ。渡辺氏はこれまで30年以上にわたって「疲労」のメカニズムを研究してきた。その結果、「疲労の本体は脳にある」という結論に至り、「脳疲労」という観点で、疲労を発見する手法や疲労を軽減する食品や医薬品、環境などについて研究している。