「社会での挫折を挫折って認めたくなかったんだよ!」慶應卒・元博報堂のプロレスラーがリングで見せた“慟哭”プロレス団体PPPTOKYOの総帥を務める三富兜翔さん 撮影:常見陽平

高学歴ショック人間大集合!有名大学を卒業後、世間に、人にショックを与えるような活動をしている人のキャリアは、何がどうなってそうなったのか。「学歴ネタかよ」「どこがショックなのか」「どこまでを高学歴と呼ぶのか?」など、いきなりツッコミが多数きそうな、可燃性の高い連載だが、生き方の多様性を感じてほしい。第1回はプロレス団体PPPTOKYOの総帥を務める三富兜翔(35)を取材した。(千葉商科大学 国際教養学部准教授 働き方評論家 常見陽平)

いい高校・いい大学・いい就職先に内定……
一度も挫折したことがなかった男の慟哭

「はっきり言って学生時代は人生で負けたことがなかった。いい高校にいって、いい大学にいって、いい就職先から内定もらって、一度も挫折したことがなかったんだよ。

 だけど、社会に出て俺は挫折って認めたくないけど、正直つらいことがたくさんあった。だけど俺は挫折を挫折って認めたくなかったんだよ!自分が挫折したってことを認めたくなかった」

 大手広告代理店の博報堂を辞めて約1年後、プロレスの試合を終えてリングの上で一人の男が吠えていた。

 慶應義塾大学出身。会社員とプロレスラーの二足の草鞋を履いたのち、安定した肩書を捨て、異端のキャリアを歩んだのが三富兜翔(35)だ。冒頭のマイクアピールは、彼が大企業を辞め、プロレスに専念し始めた25歳の時に行ったものである。

 もう少し大人になった今、異端な道への転向について何を思うのか。

「振り返れば、社会人をもう少しやっておけばよかったかなとは思う。ビジネスの基本である『お金』に対しての知識・経験はまだ弱いと自覚しているから」

 そうした選択の“弱み”を認めつつも、彼が今でも真っ直ぐに目を向けるのはプロレスだ。

 三富はプロレス団体PPPTOKYOの総帥としてもがいている。好きで飛び込んだプロレス界を今よりももっと「大人が楽しめる上質なコンテンツに変えていきたい」という一心で、演出を凝らし、選手たちを育てている。

 P.P.P. TOKYOのリングに立つのは訳アリな選手ばかりだ。「リングに立つ選手たちの人生を応援したくなるようなエンターテイメントに昇華させたい」というモットーの下で、敢えて選んでいるという。

 三富が追求するプロレスとは、一体どんな姿なのか。有名大学を出て大企業にすんなり就職を決めるという恵まれたキャリアをなぜ手放したのか。