今年のような波乱万丈の年でさえ、最も目立った危機が必ずしも最も重大なものとは限らない。ウクライナでの戦争や関税を巡る応酬、そして中東で続く混乱が見出しをにぎわしている。しかし将来の歴史家たちは、この時代で最も重要な出来事は他の場所で起きていたと語るだろう。バラク・オバマ米大統領の1期目にヒラリー・クリントン氏が国務長官を務めて以来、米国はアジアに軸足を移すことの重要性について語ってきた。21世紀を動かすのはインド太平洋地域だという考えは、超党派の決まり文句だ。だが社会として、欧州を中心とする考え方から心理的にシフトするのが難しいとわれわれは感じている。この文化的盲点の最も大きな恩恵を受けているのは、中国の習近平国家主席だ。西側が主にウクライナと中東での出来事に注目する中で、中国は自国の長期目標へと着実に向かっている。