他の「事実」をまずは確認しよう

 では、このような場合はどうするのがよいのでしょうか。ここで、本書の「事実質問」を軸に考えていきましょう。「事実質問術」は、「いつ」「どこ」「だれ」などの、5W1H(ただしWhyとHowは除く)を使います。本書で紹介する「事実質問術」は、「なぜ」質問だけでなく、「どう質問」にも解決策を提示するのです。

 ちなみに先にお伝えしておくと、これには万人共通の正解はありません。子どもによって、対応も様々です。しかしそれでも、ある程度の正解の方向性は見えてきます。

 なお、事実質問の常道としては、最初の質問を真正面から聞かないで(つまり「出来はどうだった?」とは聞かずに)、他の要素「いつ、どこで、何を、誰(が、に、と)」の中で、一番聞きやすい要素を見つけて聞き始めるのが常道です。

 例えば、「誰質問」を使って「〇〇さんといっしょに行ったんだよね? 帰りもいっしょだった?」などと聞き始めます。あまりうるさがっていないようなら、「帰り道で、互いの出来を聞き合ったり、感想を言い合ったりするの?」と聞いてもいいでしょう(これは事実質問ではありませんが、「~したの?」と聞いてしまうと直截過ぎるので、観測気球として思い込み質問をしてみる手もあります)。

「思い出すだけで答えられる質問」に

 お子さんは、おそらくそれには直接答えないで、「数学が難しかったって、〇〇さんは言ってた」などと言うでしょう。そこですかさず、「君にも難しかった?」などと中身、つまりお子さんの成績に関わることに踏み込んでいきます。実際にはここまで来れば、あとは出来不出来についてのやり取りを自然にできるはずです。

 このような微妙なやり取りを自然にかつ率直にできるようになることが、事実質問を学ぶ目的です。難しく見えるかもしれませんが、公式に従ってシンプルに考えながら、「思い出すだけで答えられる質問」を作っていくよう心がけていれば、意外に簡単にできるようになります。

(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)