ヒラ社員へ降格、20年以上も左遷…『半沢直樹』みたいにはいかない「内部告発者」の救われない現実内部通告で善が悪を裁く……とは必ずしもならないのが、日本の公益通報保護制度だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

公益通報者保護制度はザル?
兵庫県だけじゃない内部告発者の窮地

 兵庫県の斎藤元彦知事の去就は、日本人をモヤモヤさせている大きな事件の一つでしょう。公益通報保護制度を知事が守らなかったというのが百条委員会の結論ですが、この法律には罰則がありません。百条委員会の結論を待たずに不信任決議案を出し、再選挙で知事が当選したため、議会と知事でにらみ合いになったまま、膠着状態が続いています。

 公益通報を大事にすることは企業や組織の浄化を進めるはずなのですが、調べてみると保護法の成立後も、実際に「公益通報」を行った告発者が不利益を被ったケースは多いのです。

「それなら、やはり内部告発はしない方がいいのでは?」とは考えないでほしいものです。原因は、法律を作る側としては想定していなかった事態が生じ、法律が追いつかず、通報者を保護できなかったことが多いからです。今回の兵庫県の大騒動は、必ず内部告発者の保護に対応できるような法律ができるきっかけになるはずです(実際、法改正の閣議決定は出ています)。

 ただ、SNS選挙、立花孝志氏のような自分の当選を望まず他人を応援する二馬力選挙、あるいは選挙ポスターの商業利用まで、一気に法改正が進むかどうかは、国会の行方を見守るしかありません。

公益通報者は組織によって
どんなひどい目に遭ってきたか

 自らの会社や組織の不正を内部告発したいと考えている人は、世の中に案外多いのではないでしょうか。とりあえず、そんな読者諸氏に向け、今までの告発者がどんな利益を得たか(つまり、告発が成就したか)、あるいは企業・組織の反撃によってどんなひどい目に遭ったかについて、細かい事例を紹介しようと思います。これらは主に、公益通報者保護法が発足した2006年以降に起きた事件です。

【ケース1】トナミ運輸 (1974年~2017年)

 闇カルテルを実名で告発した社員が、22年間閑職に置かれたケースです。その社員は定年退職後、この処遇を内部告発に対する報復として訴訟を起こし、2005年に勝訴しました。

【ケース2】雪印乳業(2002年)

 雪印の輸入牛肉を保管し、偽装工作を命じられた西宮冷蔵が、食品に偽装があることを公開すべきと主張したところ、雪印食品は拒否。西宮冷蔵は事実をマスコミに公開したため、雪印から取引を打ち切られ、休業に追い込まれました。しかしその後、雪印食品も解散を余儀なくされ、そこから雪印グループの実質的な解体へとつながりました。