Meiji Seikaファルマが原口議員を訴えた新型コロナワクチン訴訟の争点、証拠に小説『悪魔の飽食』Photo:医薬経済社
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 製薬企業が国会議員を訴えた「異例」の裁判が始まった。東京地裁は3月3日、Meiji Seikaファルマが、立憲民主党の原口一博衆議院議員を名誉毀損で訴えた裁判の第1回口頭弁論を開いた。訴訟では、同社が製造販売する新型コロナウイルスワクチン「コスタイベ」をめぐり、原口氏が誤った知識を拡散させたとし、名誉毀損で損賠賠償1000万円を求めている。訴状に対して原口氏は答弁書を提出。両者は何を主張したのか。

 24年12月25日にMeijiが提訴したこの裁判。訴状によると原口氏がSNSの「X」や動画サイト「YouTube」、書籍で、同社を「731部隊」と論評し、コスタイベを「生物兵器」などと述べて社会的評価を著しく低下させたと指摘。不特定多数が同社に大量の迷惑電話をかけたり、コスタイベの売上げが減少したりし、甚大な影響が生じたとしている。例えば昨年10月1日に新型コロナワクチンの定期接種がスタートしたときには、原口氏がXで「今日からコスタイベ定期接種。多くの専門家が危険性を指摘しているのに強行する自公政権にSTOP ♯レプリコン」などと題して配信したという。

 コスタイベは「次世代mRNAワクチン」とされる新タイプの製品で、世界に先駆けて日本で23年11月に承認された。遺伝情報(m・RNA)に自己複製酵素を組み込むことで、抗原たんぱく質の生成を持続的に行う。この「自己増幅」により、従来のmRNAワクチンに比べ、より持続的な効果を発揮できるのが特長だ。複製を意味する分子生物の専門用語「レプリコン」のワクチンとも呼ばれる。ただ、体内で自己増殖するmRNAの影響が呼吸から未接種者にも伝播するなど、発売当初からさまざまな「デマ」が飛び交い、反ワクチン運動のターゲットになった。

 Meijiは、コスタイベに対する反ワクチン運動で大きな影響を及ぼしたのが原口氏だと見ている。訴状では原口氏について「総務大臣の経験があり、衆議院議員を10期連続で務めており、多大な社会的影響力を持つ現職の衆議院議員」と記載。Xのフォロワー数は約37.6万人で、YouTube登録者が約14.2万人など延べ84万人以上のフォロワーがいると試算。延べ173万回の表示があり、多くの人が名誉毀損の発言を耳にし、さらに拡散されて毀損され続けているという。