
あの頃の企業は今どうしているのか?
新型コロナウイルス禍による5年前の弱気相場の底からほぼ全ての米国株が持ち直した。「勝ち組」銘柄を選ぶのはたやすいことだった。政府による景気刺激策と、世界は終わりを迎えるわけではないという認識が株価を押し上げた。
一部の企業では、コロナそのものが株価上昇の原因になった。そうした状況は長続きしなかったものの、投資熱をあおる米国市場の仕組みについての教訓は残された。
人工知能(AI)、量子コンピューター、3Dプリンターといった分野における技術革新は「FOMO(Fear Of Missing Out)=取り残される恐怖」を引き起こし、多くの銘柄を急騰させる。専門家には新しい話題を、ブローカーには次の売り込み文句を、資産運用会社には新たなファンドを立ち上げる口実を提供する。
コロナが恩恵になった銘柄はテーマ株を極端にしたようなもので、後から振り返ればばかばかしく見えるほど一斉に急伸した。投資家は2020年と21年の売上高の伸びがその後も続くかのように扱った。仮にそれが可能だったとしても、競合他社も同じ機会に飛びついた。コロナという非常事態下で需要の高い現物商品を販売していた企業は、自社の将来の需要を食いつぶすことにさえなっていた。
家具ネット通販のウェイフェアを例に挙げよう。コロナ流行下で人々は自宅で過ごす時間が大幅に増えると同時に、意図せず増えた貯蓄と政府からの給付金で資金に余裕ができた。ウェイフェアは対応しきれないほどの需要に直面した。コロナを受けた底打ちから1年で同社の株価は1367%急騰した。だがウェイフェアの2024年の1株当たり売上高は、コロナ前の年の水準を下回った。
フィットネス機器メーカーのペロトンでは、コロナ流行に伴い家庭用の同社製品への需要が急増した。株価は758%上昇し、時価総額は約500億ドル(7兆5000億円)に達した。だが上昇分はやがて帳消しになった。株価はピーク時から96%下落している。「ソーシャルディスタンス (他人との距離確保)」が過去のものとなり、他のフィットネスブランドがオンラインサービスを開始したことが背景となった。ほとんど使われなかった多くのペロトン製品が現在はオンラインで売りに出されており、新製品はそれらの既存製品と競合しなければならない。ペロトンはこれまで年間利益を上げたことがなく、ファクトセットの調査によると、アナリストは売上高について4年連続で減少すると予想している。