感じの悪い人は「背中を向けたまま」で返事をする。じゃあ、感じのいい人はどうする?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんです。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか? この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介しましょう。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

背中を向けたままの人
先日、知人が高級カーディーラーを訪れた際の話を聞かせてくれました。
近くでテーブルを片付けているスタッフさんにお化粧室の場所を尋ねると、そのスタッフさんは、手を止めることなく背中を向けたまま「あちらです」と指さしただけだったのだそうです。
「回転の速いお店なら気にしないけれど、高級店では期待値が上がる。そもそも、私が買ったのは、この車を乗る暮らしでしょ。正直この態度は、見合わないなと思った」
と、知人はがっかりした様子で話していました。
似たような場面は、さらに身近にもないでしょうか。
例えば、レストランの会計時に「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と言われたので、ふとそのスタッフさんを見ると、背中を向けてレジのロールを巻きながら言っていた、などという場面に出くわしたことはありませんか。
言葉は丁寧でも、こちらに意識が向いていないのが伝わると、それが大事な人との特別な食事などであれば、なんとなく寂しい気持ちになります。
「何げない仕草」が大事
私は職場の上司と部下の関係にも同じことが言えると思っています。
ふだん大事に思っている部下なのに、いざ相談されてきたとき、背中を向けたまま「それやっといて」などと指示を出すだけ。
これでは、まるで流れ作業のように見えますよね。
「相手に背中を向ける」という比喩表現があるほど、「背中」には相手を避けているというメッセージになるときがあります。
相談されたとき、顔も上げずに応じるのは、相手に「あなたの話は優先事項ではない」と伝えてしまうことになるかも。
指示や情報なら、AIに聞けば済む時代。
それでも部下が尋ねてきたときは、一瞬でも体ごと向きを変えてみる。
そんな些細な日常の仕草が、部下のエンゲージメントを高め、組織の関係性を豊かにすると思うのです。
感じのいい人は、こうした「何げない仕草」が自然とできています。
「この人に話してよかった」と思われるか、それとも「この人に聞かなければよかった」と思われるか。
その差は、ちょっとした動作一つで決まるのかもしれません。
(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が書き下ろしたものです。)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。