なぜGMやVW、トヨタの株は売られて
中国BYD株が上昇したのか
4月3日から、米国は全ての輸入車に25%の追加関税を課した。5月3日までに、エンジンのような基幹部品にも25%の追加関税を賦課する計画だ。米国、メキシコ、カナダの貿易協定(USMCA)で、関税がかからない品目には軽減措置を設けるとみられる。
自動車追加関税の発表後、世界の株式市場では関連企業の株価が下落した。特に、米国依存の高い銘柄の下落は明らかだった。3月24日の週、米国ではGMやフォード、独フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツ、トヨタ自動車やスバルの株は売られた。事前に対米投資を発表した韓国の現代自動車も下落。それらと対照的に、対米依存が低い中国BYDは上昇した。
主要投資家は、トランプ政権の関税政策を一段と懸念している。世界の主な国と地域にとって、自動車産業は雇用や所得環境をはじめ経済運営に重要な主力産業である。
言うまでもなくわが国にとって自動車は最も重要な産業だ。2024年の貿易統計速報によると、自動車の輸出は前年比3.7%増の17兆9094億円で過去最高を記録した。インバウンド需要の増加で訪日外国人消費額は8兆円規模に増えたが、自動車に比べれば規模は小さい。
市場別に見ると、米国は最大の輸出先だ。外国為替市場での円安の進行に加え、高価格帯のハイブリッド車(HV)などの自動車の需要は伸び、米国向け自動車輸出は同3.1%、自動車の部分品も14.5%増だった。
米国の関税引き上げでわが国の自動車輸出が減少すると、日本経済への負の影響は大きい。仮に米国向け自動車輸出がゼロになると、名目GDP(国内総生産)は13兆円(名目GDPの2%)程度減少する推計もある。日経平均株価は下落した。
関税政策は輸入物価の上昇、価格転嫁の加速につながり、米国の個人消費、労働市場など経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)に大きなマイナス要因になるはずだ。今回の関税発動により、米国の年間新車販売台数が1600万台から320万台以上減るのではないかとの予想もある。