いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

まったく同じ状況でも「毎日最高と思う人」と「毎日最悪と思う人」、たった1つの違いとは?Photo: Adobe Stock

忙しいときは「暇」を求めるが……

 仕事の予定が詰まっていて忙しく、他にやりたいことをする暇がない。そんなときは「これが終わったら、しばらくは依頼を断ってでも羽を伸ばすぞ」と思う。

 ひと段落したら今度こそは本の整理をする。優雅にお茶でもしに行く。やりたい勉強もある。

 ところが、ひと段落以降、仕事のない時期が続くと焦る。仕事がしたい。私は仕事がなければただのグータラなできそこないだ。家事もできなければ、遊ぶ能力もさほどない。

 仕事をください!

 誰にというわけではないが、強いて言うなら神さまにお願いする心境になるのである。

 普段は「時間がない、時間がない」と言い、暇をくれとお願いしているくせに、いざ暇をもらえたら「仕事をくれ」と言うのだから神さまも困るだろう。

 ローマ皇帝であり、ストア哲学者でもあったマルクス・アウレリウスは、いま持っているものに目を向けて感謝せよと説いている。

もしそれがなかったとしたら?

持っていないものよりも、持っているものに目を向けなさい。
持っているもののなかで最良のものを選び、もしそれがなかったらどれほど強く追い求めていたかと考えよ。
(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 病気になったときに、「元気になりさえすれば贅沢は言わない。どうか健康にならせてください」と祈ったことのある人は少なくないだろう。

 私たちは、本当はすごいものをたくさん持っている。

 仕事、能力、健康、家族、友人、趣味、住む場所や地域のつながり、コミュニティ、相談できる人、などなど。

 そうしたものに慣れてしまうと、つい当たり前のように感じてしまう。でも、もしそれがなかったら? 「〇〇をください!」と心から望むものが数多くあるはずだ。

「何に目を向けるか」で人生は大きく変わる

 手にしているものは同じでも、いまあるものに目を向けられる人は「毎日幸せだな」と感じる一方で、ないものにばかり目を向けていると「毎日最悪だ」と感じてしまうかもしれない。

 足りないものに目を向けて「もっと、もっと」と言う前に、いまあるものに感謝をすることは、自らを幸せにするために不可欠なのだ。

 仕事があるときは仕事に感謝をし、暇があるときは暇に感謝をする。実際、どちらもありがたいものに間違いない。

 そうやって、感謝しながら日々を過ごせる人は幸福だと思う。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)