雑誌についていうなら、特集記事だけでなく、連載や読み物記事も見てほしいよね。ぼくの人脈でいろんな人に登場してもらっているけれど、見てもらえば右も左も全く関係なく、面白いと思う人が並んでいるんだから。

 朝日批判にしても、雑誌の役割として、新聞やテレビの報道で世論が一色になりそうなときには、「本当にそうなのか?」と水を差す必要があるでしょう。

 例えば、2024年になってようやく再審で無罪判決が出た袴田事件。ぼくが文春に入社した1966年に起きた殺人事件で、袴田巌さんが逮捕されて死刑判決を受けた。ぼくは文藝春秋に入社して3年目に『週刊文春』編集部に異動になり、ルポライターの高杉晋吾さんに「袴田事件は冤罪である」というレポートを5回にわたって連載してもらったんです。

 もともと高杉さんが『現代の眼』(経営評論社)という月刊誌に短い記事を書いていたんだけれど、それを分厚く書いてもらった。あの記事はかなり初期の段階で冤罪の可能性をクローズアップするものでした。

――新聞各社は再審で無罪判決が出てようやく「自分たちの報道にも誤りがあった」と書いていますが、当時から冤罪を指摘している人はいたんですね。

花田 それが雑誌ジャーナリズムの役割だから。影響力の大きい朝日新聞なんかは当然、批判することになるよね。

――同じ朝日批判でも、思想的な意味での「右」のイメージとはちょっと違いますよね。今も『Hanada』には共同通信出身の粟野仁雄さんによる袴田事件や、やはり冤罪事件である大川原化工機(編集部注/生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を経済産業省の許可を得ずに輸出したとして、2020年3月11日、大川原化工機株式会社の代表取締役ら3人が逮捕され、2人は11カ月勾留され1人は死去。容疑が事実に当たらないことが判明した2021年、東京地検が公訴を取り下げた冤罪事件)のルポや当事者のインタビューが掲載されています。