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近年、なにかと話題になるネット右翼。主にネット上で活動するため、その実態はリアルな世界では分かりにくい。作家・評論家の古谷経衡氏が、そんなネット右翼の人口を可視化した。本稿は、古谷経衡著『シニア右翼 日本の中高年はなぜ右傾化するのか』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。
2014年「次世代の党」によって
ネット右翼の票数が可視化
ネット右翼と呼ばれる人々は日本にどのくらい存在するのだろうか。ネット右翼は上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」に寄生する存在である。ようするに彼らの主張をオウム返しする熱心なファンこそがネット右翼である。よって彼らの人口を推しはかるには、まず彼らの上位存在がどのような政党や政治家を支持しているのかを観察し、彼らに支持される政党や政治家が、とりわけ国政選挙においてどのくらいの票を得たのかが大きな参考になるといえる。
「保守系言論人」とか「右派系言論人」は一貫して自民党を支持してきた。しかしながら自民党であればなんでも良いのかと言えば違う。自民党の中でも「タカ派的・復古的」とされる清和会に所属する者や、無所属であってもそれに近い政治家を伝統的な支持対象としてきた。彼らからするとハト派とされる保守本流の宏池会や、対中融和姿勢が「強いとされる」旧経世会系は「反日」なのである。またこれとは別に旧民社党(旧社会党右派)出身の個別議員を支持していたりしたが、やはり主力の支持先は自民党である。
しかし自民党清和会に所属する議員(に限らないが)は衆議院で小選挙区を地盤とする者、ブロック比例と重複する者(比例復活)、比例ブロック単独で出馬する者、参議院では選挙区を基盤とする者、全国比例単独の者など様々であり、衆参それぞれの国政選挙で自民党の総得票数は見えるが、ネット右翼以外の支持基盤である職能団体などの票が大きく混ざるため、永らくネット右翼の投票行動が見えづらかった。よって彼らの総数もまた判然としないものだった。
ところが2014年衆院選挙で憲政史上初めて、これまで自民党票の中に紛れていたネット右翼の票が「分離」され可視化される事象が起こった。「結いの党(旧みんなの党の一部)」との合流を巡って維新から分派し、結党された新党「次世代の党」である。
次世代の党は党首に平沼赳夫をおき、とりわけ復古主義、右派ナショナリズム、反構造改革路線を標榜して「保守系言論人」とか「右派系言論人」から圧倒的な支持を得た。これまで自民党の中に埋没していた彼らの政治的傾向が、はじめて単独の党の中に収斂されたのである。よってネット右翼もまた次世代の党に対し熱狂的な支持を表明した。同党は14年衆院選挙においてネット右翼から極めて高い支持を得て、14年の東京都知事選挙に立候補した元航空幕僚長の田母神俊雄を東京12区に立候補させるなどし、同時にネット動画での選挙活動に力を入れ「タブーブタのウタ」などと称して、根拠不明なまま生活保護受給者へのバッシングを行うなどした。
次世代の党は141万4919票獲得
ネット右翼総人口は200万人?
結果、次世代の党は党首の平沼、園田博之の2名が地盤である小選挙区で当選したほかは全て落選し、比例ブロックでの当選者もゼロであった。とはいえブロック比例での全ての得票を合わせると141万4919票を獲得した。ここに初めて、ネット右翼の投票行動が自民党などと分離される格好となり数字として現れたのである。
141万4919という次世代の党の数字は、ネット右翼の人口を考えるうえでほぼ全ての基礎になる数字である。有権者総数約1億人に対してのこの数字は、すなわち1.5%程度を示す。この時の衆院選の投票率は全体で52.66%という低いものであった(第二次安倍政権下)。いかにネット右翼が強い政治的主張をオウム返しする存在であっても、彼らの100%が投票所に行ったとは考えにくい。雑駁に考えて2%とするべきである。つまりネット右翼の総人口はこのことから有権者の約2%にあたる200万人程度と推定されるのである。
次世代の党は14年衆院選挙で壊滅的打撃を被ったために、落選した多くの議員は自民党に復党した。当選した平沼、園田を筆頭に、落選組では杉田水脈らが自民党に移籍して後に国会議員になった。次世代の党は「日本のこころを大切にする党」に党名変更し、中山恭子が党首になって再建を試みたが、多くの人々が党を去って党勢衰微に歯止めがかからず、2018年11月を以て解党した。ちなみに中山は夫の成彬とともに2017年に希望の党に入党している。
ネット右翼票は
140万前後で推移
次世代の党は実質的に14年衆院選挙でとりわけ有意な数字を残したものの、参考になる数字としてはこれきりで終わった。これ以外に、ネット右翼の総人口を推し量る国政選挙は無いのだろうか。参議院全国比例が適当である。参院全国比例は非拘束名簿式であり、立候補者個人への投票総数が可視化されるため、とりわけ「保守系言論人」とか「右派系言論人」が支持した全国比例候補が個人名でどの程度を得たのかを合算すれば、14年衆院選挙における次世代の党にならぶネット右翼の人口を類推する大きなデータになる。
2016年参院全国比例でのそれは、対象とする候補の得票として青山繁晴48万1890、片山さつき39万3382、山谷えり子24万9844、山田宏14万9833、宇都隆史13万7993(全て自民、当選)であり総合計では約141万3000票になる。
16年選出の改選である2022年参院全国比例では、同じく青山繁晴37万3786、片山さつき29万8091、山田宏17万5871、山谷えり子17万2640、宇都隆史10万1840(全て自民、宇都のみ落選)であり総合計は約112万2000票であった。







