ネトフリとスポティファイ、景気後退への耐性はPhoto:Roy Rochlin/gettyimages

 ストリーミング戦争に勝つことと、世界的なリセッション(景気後退)に勝つことは別問題だ。

 関税を巡るここ1週間の米株式市場の乱高下の中でも、動画配信大手ネットフリックスと音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーはIT・メディア分野の他社の大半と比べ好調だった。こうした粘り強さには一理ある。サブスクリプション(定額課金)型のストリーミングサービスは他国からの輸入品に対する高関税の直接的な打撃を受けないためだ。

 ネットフリックスとスポティファイには月額料金を支払っている顧客が合計で5億人以上おり、こうした幅広い顧客基盤によって両社はコンテンツ制作者と視聴者に対する強力な立場を維持している。たとえ米国が景気後退入りして下位の競合他社が打撃を受けたとしても、両社の優位性は持続し、さらに強まる可能性がある。キーバンク・キャピタル・マーケッツのアナリスト、ジャスティン・パターソン氏は4月9日のリポートで、ネットフリックスとスポティファイは「定期的な収入、製品サイクル、業界再編などによりディフェンシブな銘柄」になっているとの見方を示した。

 ただ、粘り強いからといって免疫があるわけではない。ドナルド・トランプ大統領が一部の関税について、対象国に米政府との新たな取引を行う時間を与えるために90日間の停止措置を発表した後も、景気後退のリスクは現実のものとして残っている。また、ネットフリックスとスポティファイは支出を抑えたい消費者が最後に切り捨てる選択肢の一つかもしれないものの、両社とも複数の価格帯のプランを提供しており、契約者は数ドルを節約するために下位プランに移行することができる。

 これは痛手になるかもしれない。例えば、ビジブル・アルファがまとめた推計によると、ネットフリックスでは北米における広告なしプラン契約者1人当たりの毎月の支払額は約18ドル(約2600円)で、同社の広告付きプランではその半分以下だ。スポティファイの広告付きの無料プランのユーザー数は有料プランよりもはるかに多いものの、有料プラン契約者が同社の総売上高の88%を占めているため、下位プランへの移行はスポティファイの収益を圧迫することになる。JPモルガンのアナリスト、ダグ・アンムス氏はネットフリックスとスポティファイの投資判断をいずれも「買い」としているが、4月8日のリポートで「インターネット分野にはマクロ経済に対する免疫はなく、粘り強さの度合いについて違いがあるだけだ」と指摘した。