相続対策をしなかった無田家の場合
無田家は教職一家で、祖父は長らく学校長をしていました。仕事柄もあってか無田家は税金には無頓着のようでした。
そんな無田家に、やがて相続の日がやって着ました。祖父の残した財産は、家屋敷を中心に数十億と評価されました。その妻である祖母は家と敷地の半分を中心に相続し、残りの財産を子どもたちで分けました。これにかかった相続税は、なんと10億を軽く超えていました。当然、そんな現金があるはずもなく、敷地の半分を処分して税金を払うことにしたのです。
そして、その1年後には、祖母もなくなりました。祖父が亡くなったときには「配偶者の税額軽減」という特例があったため、敷地の半分を残すことができましたが、このときは特例も使えず、相続税を支払うために残った家屋敷を処分せざるを得ませんでした。
家族は残ったお金で、東京郊外に新しい家を買い求めました、無田家の財産はだいぶ減ってしまいました。場所は都心から離れ、家も小さくなりました。それでも一般の家庭から見れば、無田家はまだまだ資産家であることには変わりありません。
その後に、バブル経済がやってきて、無田家の敷地も急激に上昇し、かなりの金額で評価されるようになりました。
バブル経済の真っただ中、不幸にも無田家の父親が亡くなりました。東京の郊外といっても、100坪を超える土地がありましたので、数億円の相続税がかかりました。東京の郊外の土地もまた売却して、相続税を支払わざるを得ませんでした。
無田家の長男は、その残ったお金で埼玉県に家を買い、現在そこに住んでいます。三代の相続で財産がなくなるといいますが、三代どころか二代で、東京都心から郊外へ、さらに埼玉県へ住居が移り、移るごとに家が小さくなっていきました。相続があるたびに財産が減っていき、住み慣れた家屋敷を手放し、都心から離れた所へ移り住むという大変な苦労を味わいました。