「キミには出世欲ってもんはないの?」

 中田堅司課長は呆れ顔で言い放った。部下の若手新二クンには、これまでも何度か資格試験の受験を勧めていた。昇進には必要な資格だが、若手クンは「別にいいっス」の一点張りだ。

 「そんな無気力なことじゃ困るなあ。男はもっとこう、仕事にギラギラ燃えなきゃ。会社はそういうヤツを評価するんだよ?」「べつに無気力ってわけじゃありませんよ。ただ、余計な責任を負いたくないだけっス」

 上昇志向が人間を成長させる――ずっとそう思って自分を燃え立たせてきた。ところが、最近は若手クンのように目の前のことをこなすだけの若者が増えている。同じ男として、ビジネスマンとして歯がゆくてならない……。

出世欲のない「無気力社員」と
他人を蹴落とす「アピール系社員」

 近頃、出世欲のない若手の男性社員が増えてきているようだ。指示された仕事はきちんとこなすが、社内競争には興味がない。そんな部下をどう指導していいかわからず、悩んでいる管理職も少なくない。「男は出世してナンボ」と叩き込まれてきた世代にとっては、彼らの淡々とした姿勢が、いかにも無気力に見えるのかもしれない。

「中間脳」部下にご注意!<br />「無気力系男」と「ギラギラ系女」 「今の若いヤツってわからないですね。出世なんてしなくていいって言う。おカネへの執着心が薄くて、旅行や車にも関心がない。なんていうか淡々としているんです。私は労働組合の委員をしているのですが、ずっと会社とやりあいながら待遇の改善を進めてきた。でも、彼らはその意思を引き継いでくれそうにない。なんだかがっかりしちゃいますよ」(マスコミ関連会社勤務・40代男性)

 プレイングマネージャーが圧倒的に増えている昨今、「課長になると仕事が増えるだけ。いいことなどない」というぼやきはよく聞こえてくる。昇進すると諸手当が削られたり、残業代が出なくなったりして、かえって収入が減る場合すらあるようだ。出世にメリットがない以上、若手が上昇志向を失うのも無理はないだろう。