会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。

リーダーに落ち度はなくても、パワハラと言われてしまうときの対処法
「相手の人格を否定してはいけない」
「行動だけを指摘する」
「冷静に事実を伝えよ」
ハラスメント防止のために、このようなフィードバック手法が推奨されています。確かにこれらは重要な指針です。
しかし、リーダーがいくら正しくフィードバックをしてもパワハラ認定されてしまうことがあります。
それは、メンバーによっては、どんな言い方であれ「フィードバック=否定」と捉えることがあるからです。そして、「そう感じる人がいれば、それはハラスメント」と認定されてしまう風潮もあります。
こうなってしまうと、リーダーは何も言えなくなり、自分ひとりで抱え込んでしまうことになります。
行動を指摘したリーダーが、どう見えているか?
前回の記事(記事:ハラスメント研修をしても「パワハラが消えない」本当の理由)で、フィードバックの際には相手にしてほしい行動を伝えましょう、という話をしました。
しかし、これも万能ではありません。いくらリーダーが正しい接し方をしても、相手が「正しく」受け止めるわけではありません。
たとえば、こんな状況を想像してみてください。
「この報告書の◯◯の箇所は事実と異なっているね。また、△△は情報量が多すぎるのでカットしましょう。○×部の○○さんから前回の報告書資料をもらい、作り直してみて」
確かに人格否定はしておらず、感情的な表現も使わず、行動だけを指摘しています。一見、模範的なフィードバックに見えるかもしれません。
しかし、このフィードバックを受ける部下の立場になってみましょう。彼らの多くは、報告書作成に時間と労力をかけ、「これでリーダーに評価されるだろう」と期待して提出しています。
その期待が裏切られ、欠点だけを指摘されれば、どんなに冷静な言葉で伝えられても、強烈なダメ出しとして受け取られるでしょう。
ではどうすればいいのか?
ポイントは、メンバーの「よかれと思って」を評価することです。
部下が「よかれと思ってやったこと」を見逃していませんか?
ここで重要なのは、部下の行動の背後にある「よかれと思って」という意図に目を向けることです。メンバーの行動には、その人なりの「よかれと思って」があります。
たとえば、次のようなことです。
「詳細データをたくさん載せれば喜ばれるだろう」
「過去の事例と比較すれば説得力が増すだろう」
「自分なりの分析を加えれば評価されるだろう」
しかし、この「よかれと思って」が、リーダーの期待とズレていることがあります。
リーダーからすれば、「要点だけをまとめてほしかった」「過去との比較より今後の展望を知りたかった」など、別の期待があったかもしれません。
問題は、部下の「よかれと思って」を言葉にせず、ただ欠点だけを指摘してしまうことにあります。