大した成果は必要ない
一見「コスパ」がよいゴマすり

 一方で、こうしたゴマすりと比較したとき、本当の意味で「かわいがってもらう」ことのハードルは相対的に高いといえる。なぜなら、自然にかわいがってもらうためには、相手の期待に応えられるだけの成果を示し続ける必要があるからだ。

 例えば、営業であれば顧客の課題を解決し、売り上げを上げ続けること。開発職であれば優れた技術力を発揮し、プロジェクトを成功に導くこと。これらの成果を出すためには、日頃から勉強や実務経験を積み、専門性を高める努力が欠かせない。

 また、相手が自分を「かわいがってくれる」ようになるためには、業務面だけではなく人間としての魅力や誠実さも重要である。上司や顧客に対し、常に礼儀をわきまえ、うそや大げさなアピールをせずに真摯(しんし)に向き合う姿勢こそが、長期的に見て相手の心を動かす。

 結果として得られる信頼や愛着こそが「かわいがってもらう」関係の本質であり、一時的なおもねりやテクニックで得られる「好感」とは大きく異なる。

 このように考えると、普通の人にとっては、ゴマすりのほうが圧倒的にコストパフォーマンスが良い。言葉を選ぶ技術や相手が何を欲しているかを見つける技術さえ身につけてしまえば、ゴマすりは安定的な成果が見込める。

 一方、仕事のほうは運不運もあれば、状況の変化によって「結果を出し続けられない」こともありえる。

 誰しも調子の波がある。才能ある人でも、体調不良やプライベートな問題、チームの不和など、さまざまな要因によって成績が落ちることは珍しくない。一度や二度は踏ん張れても、長期間結果を出し続けるのは非常に難しい。

 そうしたとき、大した成果は出さずとも、常に上司や顧客の機嫌を損ねないよう振る舞い、「ゴマをする」ことで無難に好感度を維持してきた人のほうが評価を落としにくいという逆転現象が起こるのだ。