ほっこり理論とは?

「まずは情熱の小さな火種を持った人を増やすこと。キャンプファイヤーのように火にあたってほっこりしながら、少しずつ火種が広がっていくのをイメージしています。いきなり火を大きくすると、驚いて消そうとする人が出てくるかもしれません。だから、大きくするのではなく、火の数を増やしたい。小さな火種がポコポコ出てくれば、風が吹いて大きくなるかもしれないし、仮に僕の火が消えても、他の火は残っていると思う」(太古さん)

「今のフェーズで必要なのは工夫より行動量。質より量。とにかくやり続ける」と太古さん。根底にあるのは、いいクルマをつくりたいという執念だ。

製造現場の社員がプログラマーに変身する「地獄のAI研修」

――会場の皆さんから、たくさんの質問をいただいています。まずは一番多い質問から。工場の現場の方がプログラミングを学んで自ら改善するのは、ハードルが高いように感じます。どうやって習得しているのでしょうか?

太古さん:手を挙げてくれた皆さんには、2カ月間のAI研修を受講していただきます。具体的には、Python(パイソン)を基礎から学びます。Pythonとは、AIやデータ分析、Webアプリ開発、業務自動化など幅広い分野に活用できる人気のプログラミング言語です。

 これが工場の皆さんから「地獄のAI研修」と呼ばれる所以(ゆえん)なのですが、単なる座学ではなく、自分の業務課題を設定し、実際にシステムやアプリを作って解決し、最後は工場長に成果を発表します。

 ポイントは、2カ月間でやり切れるテーマを選ぶことです。受講者には日々の業務課題を洗い出してもらい、解決にどれくらい時間がかかるか見極め、「2カ月でできそう」「これは研修後にじっくりやろう」とマッピングしていきます。

 AIで解決する場合、必要なデータが存在していないケースが多く、新たにデータを集めることから始めます。「テーマ設定→データ収集→モデル作成→実装」という流れを高速で進め、最後は工場の現場と調整しながら、開発したアプリやシステムを組み込んでいきます。

――受講者の多くがプログラミング未経験とのことですが、適性は事前に見極められるものでしょうか?

太古さん:こればかりは正直、やってみないと分かりません。大事なのは好奇心。加えて、現場の皆さんは普段からいろんな困りごとを抱えています。それらを解消できればもっと生産性が上がるはず。その気持ちが出発点です。