試験前の「一夜漬け」は
効果があるのか?

 誰しもやったことがある「暗記法」について、脳科学的な視点から解説をしていきます。

 テストの前日に、覚えなければいけないことを一気に暗記し、本番に臨む「一夜漬け」。

 完璧に覚えられたとはいえないまでも、一夜漬けでテストの点数をアップさせた経験がある人も少なくないでしょう。

 海馬が保存する「短期記憶」は、覚える内容や海馬の状態によって個人差がありますが、2~4週間ほどの期間は保持されると言われています。一夜漬けで覚えた内容は、次の日であれば覚えている可能性も高く、中間テストや期末テストなど、比較的勉強時間がとれない時に行われるようなテストでは、一定の効果があります。

 しかし、司法試験や医師国家試験といった試験でも有効かと言われると、疑問があります。短期記憶だけでは対応できない分量があり、覚える情報の質も違うため、一夜漬けで弁護士や医師になることは難しいといえます。

 情報が身につく・身につかないといういい方をすれば、一夜漬けで得た知識は「身につかない」ものであり、長期記憶や応用力が問われる試験においては適さないでしょう。

 ただ、私も学生の頃にはテストの教科がおよそ20科目もある中で、学習しきれない部分を一夜漬けで乗り切ってきたことはありました。試験を切り抜け、1点でも多く点数を取るための「危機管理」の手段としては有効だと思います。

 短期記憶の個人差はかなり大きく、ADHD(注意欠陥多動性障害)の特性のある人は、2~4週間と言わず、一晩寝たら、昨夜解けた算数の問題が全くわからなかったり、立ち上がった瞬間に、やるべきことが頭から消えたりすることも多々あります。

 もちろん、認知症の兆候が出ている人はいうまでもなく、さっき一緒に食べた食事のメニューすら記憶していないことが起こります。