苦境や困難に直面したとき、すぐに悩んでしまう「不幸体質」の人がいる一方で、「絶対に悩まない人」もいます。そんな「悩まない人」になるための考え方を教えてくれるのが、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』です。12歳からの6年間を「修道院」で過ごした著者が、あらゆることが禁止された暮らしで身につけた「しんどい現実に悩まなくなる33の考え方」を紹介しています。
この記事では、本書の著者である川原マリアさんと、『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』を執筆した「株式会社和える」代表の矢島里佳さんに「不自由の楽しみ方」をテーマにお話しいただいた内容を紹介します(ダイヤモンド社書籍編集局)。

“メンタルが強い人”だけが知っている、困難に直面しても「絶対に悩まない」ための考え方・ベスト1Photo: Adobe Stock

「ないなら、つくる」で始めた起業家人生

川原マリア(以下、川原) 矢島さんと初めてお会いしたのは、もう10年以上前になりますね。まだ起業される前でしたよね?

矢島里佳(以下、矢島) はい、大学4年のときに「和える」という会社を立ち上げて、今年で14年目になります。あっという間でしたが、創業時からずっと変わらず「日本の伝統を次世代につなぐ」ことを軸に活動しています。

“メンタルが強い人”だけが知っている、困難に直面しても「絶対に悩まない」ための考え方・ベスト1
『ブレずに「やりたいこと」で食べていく起業』矢島里佳(著)、264ページ、日本実業出版社

川原 14年も続けてこられたのは本当にすごいと思います。そもそも、なぜ起業したんですか?

矢島 赤ちゃん・子どもの頃から日本の伝統に触れられる。そういう機会をつくる仕事がしたくて、その軸で就職活動をしたのですが、当時そのような会社は見つかりませんでした。「ないなら、自分でつくろう」と創業することにしました。

 和えるでは様々な事業を行っていますが、一番最初に始めた事業が “0歳からの伝統ブランドaeru”、出産祝いを「もの」ではなく「日本」を贈る体験にする提案です。同じ金額を使うにしても、日本の職人さんが手がけたものを出産祝いに贈ることで、日本の伝統が次世代に受け継がれていく――。そんな循環を生み出したりすることに尽力しています。

不自由さは「思い込み」でしかない

川原 私も着物のデザインをしているので、近い領域で活動していますが、今は「伝統産業」は“斜陽”とも言われがちです。きっと、苦労も多かったんじゃないですか?

矢島 じつは私、一度も「斜陽産業」だと思ったことがないのです。

 職人さんたちは、本当に魅力的な技術をお持ちです。それを活かして、時代の文脈に合ったものづくりをすれば、むしろ未来の文化と経済を切り拓く可能性に溢れていると思います。

「これまでこうしてきたから、これからもこうしないと」。そう考えると、可能性が狭まります。でも、「この技術って、そもそも何のために生まれたの?」と問い直し、「どうすれば、現代の人たちの役に立てるか」といった視点で考えると、まったく別の道が拓けてきます。

「不自由さ」って、たいてい“思い込み”から来ているのですよね。

川原 わかります。私もこの業界に入ったとき、伝統は「しがらみ」ではなく「可能性」だと感じました。もちろん大変なこともありますが、見方を変えるだけで全然違って見えてきますよね。

苦境に直面したときこそ、冷静に「俯瞰」する

矢島 マリアさんが書いた『不自由から学べること』で、冒頭に「水が半分入ったコップ」の話がありましたよね。まさにあの感覚です。

川原 「半分しかない」と思うと苦しくなるけど、「半分もある」と思えると救われる。さらに、「その水にどんな意味を見出せるか」で、世界の見え方はもっと変わる。そう伝えた箇所ですね。

矢島 それで言うと、私はただ「水が半分ある」という事実を見ているだけなのです。

 そこに悲観も楽観もなくて、「誰がこの水を必要としているのか」「この水から何が生まれるか」と、客観的に見ているイメージですね。

 たとえ伝統産業が「斜陽」だとしても、それはただの事実であり、未来がどうなるかはわかりません。変にポジティブやネガティブにとらえず、事実を事実として見て、必要なことをやる。それを続けていたら、気づけば14年が経っていました。

川原 まさに“メタ認知”ですね。私もよく言うのですが、自分自身を「雲の上から見る視点」が大切ですよね。感情的になりすぎず、「じゃあどうする?」と冷静に問い直す視点。それを持っているだけで、行動も変わってきます。

矢島 そうなのです。自分が当事者であっても、苦境にあるときこそ、冷静に俯瞰する力が必要だと思います。

 過去や現在に縛られず、未来に希望を持って生きていくには、そういう視点を持っておくことが不可欠ですよね。

(本稿は、書籍『不自由から学べること』著者の川原マリアさんと、「株式会社和える」代表の矢島里佳さんによる対談記事です)

矢島里佳(やじま・りか)
1988年7月24日、東京都生まれ。二児の母。職人と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から全国を回り始め、大学時代に日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから、大学4年時の2011年3月、株式会社和えるを創業。2012年3月、幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、“0歳からの伝統ブランドaeru”を立ち上げ、日本全国の職人と共にオリジナル商品を生み出す。事業承継・中小企業やブランドの原点を整え、魅力化をお手伝いする「伴走型リブランディング事業」を行い、地域の大切な地場産業を次世代につなぐ仕事に従事。自社で実践してきた、「日本の伝統を通じて、ご機嫌(ウェルビーイング)に生きると働くを実現する」講演会やワークショップも展開。その他、日本の伝統や先人の智慧を、暮らしの中で活かしながら次世代につなぐために様々な事業を創造。