「目標」に固執した組織の末路

安斎 軍事的GRIT「組織不正」を招くリスクもあります。

『組織不正はいつも正しい』(中原翔・著/光文社新書)という本の中で紹介されている「ソーシャル・アバランチ」という概念があります。

 要は、「売上達成」という目の前の正義を守り抜こうとするあまり、本来守るべき法律や倫理を無視してしまうような不正行動のことですね。

 本人たちは、それが「悪いこと」だとは思っていない。正義のつもりで突き進んだ結果、ルール違反が起きてしまうという構造があります。

 だから、自分たちが掲げた目標に固執しすぎると、どこかで道を誤る。「最後までやり抜くことが正義」という思い込みには、そうした危うさも含まれているように思います。

安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)、『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)、『パラドックス思考』(ダイヤモンド社)、『チームレジリエンス』(JMAM)などがある。