3つのカテゴリーの投資家

 ここからは、より具体的に、「ハイブリッド・バブル」の構造を説明しよう。

 まず、日本国債の投資家は、3種に分けて考えられる。分類は、国内外の投資家にかかわらず、その投資行動の違いによる。

 第1は、常に投資からの利益最大化を狙う投資家である。ヘッジファンドや海外投資家の多くが典型だ。彼らは早く、かつ、速く動くので、市場をリードし掻きまわす存在になり得る。ただし、日本国債は彼らの基準に照らせばハイリスク・ローリターンだから、これまでほとんど買わなかった。

 第2はファンダメンタルズにしたがう投資家で、ほかの資産より国債が割安なら買い、リスクに応じて保有額や満期を調整する。メガバンクなど大手の金融機関や多くの年金基金がこれにあたる。

 第3は、冒頭のべた財政破綻リスクを無視して「限定合理的」に国債を買い続ける投資家だ。主に、信用金庫や信用組合といった中小金融機関や、生命保険、ゆうちょ銀行・かんぽ銀行がこれにあたる。

 第1の投資収益の最大化を狙う投資家は、少なくともこれまでは日本の国債市場で出番がなかったので、ここでは考えない。

 つまり、国債市場には、第2と第3の投資家それぞれが安定的に存在している。第2の投資家の均衡価格はファンダメンタルズに基づいて決まる。財政破綻リスクを無視する第3の投資家たちの均衡価格はそれより高くなる。そして、双方が融合した場合、新しい均衡価格はその中間に決まる。

 新しい均衡価格は、第2の投資家にとっては従来価格より高くなるので保有株を売りやすくなり、第3の投資家にとっては従来価格より安くなるので割安に買い増すことができる。双方にとって望ましいため、この均衡はきわめて安定的となる。両者の中間に価格が決まるということは、ファンダメンタルズ価格より高い水準であり、これが暴騰や暴落もせずに続くのである。これが「暴落しないバブル」が維持されてきた仕組みだ。