黒田日銀の緩和姿勢を見越して、国債の金利低下圧力は日増しに強まっている
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「日本銀行が持つ政策手段をすべて動員する」

 日銀の金融政策決定会合を翌日に控えた4月2日。大手銀行の国債ディーラーは、パソコン画面を横目に、衆議院予算委員会での黒田東彦総裁の発言に注目した。

 黒田総裁が、5~10年の残存期間の長い国債の購入に改めて言及する姿を見て、このディーラーは「会合は26日にもある。緩和策の決定のタイミングは、もはやどうでもよくなった」と話す。

 大胆な金融緩和策という旗を、黒田総裁が就任前から目いっぱい振る中で、足元の10年物国債の金利は、すでに最低記録(0.43%)に肉薄、その流れが変わるような材料は見当たらなかった。

「0.43(%)までは確実にいくでしょうね」

 大手銀行で債券などの取引をする市場部門の統括役員は、週1回開かれる経営会議の中で、金利低下が続く10年債の読み筋について、そう報告しているという。

 実際に4日の決定会合直後に、長期金利は0.4%台に突入した。だが、「国債バブル」が膨らむほど、銀行経営は大きなリスクにさらされる。その理由は大きく二つある。

 一つは、金利が低過ぎて、運用益が伸ばしにくいこと。たった1年前まで、1%あった10年債の金利は、0.5%台で推移。5年債では0.13%台と、前年同期の3分の1の水準にまで低下した。これだけ金利が低いと「必死に取引をして、小銭を何とか積み上げているような感覚」(中堅ディーラー)というのが現場の声だ。

 メガバンクの幹部は「うちは(金利の高い)外債購入で賄っている部分もあるが、地域銀行はもっと厳しいだろう」と話す。