大胆な緩和策を志向する黒田東彦・日本銀行総裁の下、初の金融政策決定会合が開かれた。資産買い入れ基金の枠組みが「複雑でわかりにくい」との認識を示していた黒田総裁は基金の廃止を有言実行、“レジームチェンジ”の追加緩和に踏み込んだ。その裏では、政策委員会に“不協和音”が流れていた。
Photo:REUTERS/AFLO
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一つの提案が、日本銀行の政策委員会メンバー(総裁、2人の副総裁、6人の審議委員)の間に妙な“しこり”を残している。
それは3月7日、白川方明・前総裁体制下で行われた最後の金融政策決定会合で、白井さゆり審議委員が示した新たな“追加緩和策”だった。
「あの提案は実に不愉快だった。ただのスタンドプレーだ」
別の審議委員は、近しい関係者にそう不満をぶちまけた。
この委員が激怒するのも無理はない。白井委員が提案したのは、(1)残存3年以下の国債が対象の資産買い入れ基金と、超長期国債まで購入する国債買い入れオペ(成長通貨供給オペ)との統合、(2)基金を通じた「無期限緩和方式」の国債買い入れ(2014年導入予定)の前倒しの二つだ。
つまりこれは、黒田東彦・新総裁が言及する「大胆」な緩和策と同じ内容だ。「彼女は早くも黒田さんに鞍替えしたと評判ですよ」と、ある政府高官は揶揄する。
9人の政策委員会メンバーの中でも誰の提案が実現するかは、市場の関心事でもある。それだけにある委員OBも、「自分が注目を浴びたいとの“色気”を出しただけ」と手厳しい。
というのも、黒田氏の総裁人事が国会で提示される前から、実は他の複数の委員も今後は(1)の「基金の廃止・統合」が緩和の選択肢と認識していたからだ。2月会合の議事要旨でも統合について議論されたことが判明したばかりか、3月会合でも「さらに論点整理がなされた」(関係筋)最中だった。