安定性を強化する投資家特性

 しかも、ファンダメンタルズに基づいて行動する大手金融機関など第2の投資家、財政破綻リスクを無視して買い続ける「限定合理的」な第3の投資家は、いずれも金融機関が多い。資金調達の多くを、預金に依存している。このため、資金制約上、無限に国債を買えるわけではないし、制度上、ある程度の国債は持たざるを得ない。要は、無茶な売り買いをする投資家は国債市場にいなかったのである。

 第2と第3の投資家それぞれが安定していること、そして、双方の安定的メカニズムが「同時に」存在する状態が、国債市場の安定性をいっそう強固にしているのだ。この“ハイブリッド”構造による安定性があるため、外国人投資家など投資収益を追求する第1の投資家が空売りを仕掛けるなどしても、付け入る隙はない。過去に暴落する可能性があった何度かのショック時も、すぐに均衡を回復し、安定を取り戻せたのは、この“ハイブリッド”メカニズムのおかげなのである。

 しかし、黒田日銀の“異次元”金融緩和で、このハイブリッド・バブルは変調をきたしつつある。次回はその変化を議論しよう。いよいよ国債は暴落するのか? ※次回公開は5月28日です。


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ハイブリッド・バブル  日本経済を追い込む国債暴落シナリオ

暴落しない静かなバブルは、
国債依存症となった金融機関の安楽死、
ひいては日本経済の安楽死につながる。

 日本の国債が暴落リスクと隣り合わせと言われながら、高価格・低金利を維持してきた「不安定な安定性」の均衡メカニズムを分析し、黒田東彦総裁率いる日本銀行が国債買い上げを進めることでこの均衡が崩れ、普通のバブル化を起こしつつある現状と今後の見通しを明らかにします。果たして国債バブルは崩壊するのか?大口保有者である金融機関の未来は?非効率な国債への資金投下が続く日本経済の行く末は?今後を考えるうえで示唆を得られる1冊です。ご一読ください!

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6/2(日)20:00~20:30
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